館長ノート 33

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観蝶日記:ルリタテハ -蝶の寺-

四国八十八ヶ所、六八番、神恵院(香川県観音寺市=写真)の境内にある茶店、悟桐庵のオヤジから「近頃、夕方になると決まってルリタテハがやってきて、前の石標で羽を休める」と聞いたのは去年の夏のことだった。
わたしが子どもだった頃は、菜っぱの畑や河原でモンシロチョウやキチョウ、学校のカラタチの垣根にはアゲハチョウ、海辺にある低い八幡山、興正寺山では、ヒオドシ、ツマグロヒョウモン、アサギマダラなどをよくみかけた。しかし、ルリタテハは、すくなくとも讃岐山脈のすそあたりまで行かないとお目にかかれない珍しい蝶だった。ズサンで不器用なわたしは、昆虫少年にはなれなかったけれど、悟桐庵のオヤジたちのグループはけっこうまじめにやっていたので、いつも横目でながめていた。

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チョウは自然環境を敏感に反映する。卵を産み付ける、幼虫が食べる、密を吸うなど、それぞれに独自の植物が必要だからである。そう考えると植生はずいぶんむかしと、変わっている。
海辺の山の斜面は、パラパラと低いクロマツやアカマツがあるのだが、枯葉をあつめて燃料に使うので、地肌が出て明るく、絶好の遊び場だった。マツタケを見つけたことさえある。ところが今は、シイやカシの照葉樹が優勢になりもくもくとわき出すように山を覆っている(写真)。このあいだ、懐かしさのあまり、なかにに入ろうとしたが、枝が日を遮って暗く、林床にはぶあつく落ち葉が堆積して、歩くことも難しかった。
もっともこれは、代表として京都の東山をあげるといいとおもうが、西日本全域にみられることである。今の日本からは、人手のよく入った伝統的な里山が失われているというか、放置したために、潜在植生に帰っているといえるのだろう。だからチョウの種類も変わって当然である。

しかし、もともといなかったルリタテハはこの寺にどんな道を通ってやって来たのだろうか。多分、じぶんで飛んできたのだろう。その飛翔力をもってすれば、4,5キロはなれた讃岐山脈の麓からやって来るのはそう大したことではないはずだ。
町の花屋さんにいった時、サカキやヒャクニチソウといった、「仏さん花」に卵か蛹がひっついてきた可能性もあるとおもった。聞いてみると、たしかに、あのあたりは古いタイプの仏前花の供給地だという。ところで、今の花屋は、むかしとくらべると、驚くほど彩りゆたかである。オランダやオーストラリア産の輸入花もおおいという。もちろん厳しい検疫はあるのだろうが、外国産が紛れ込んでくることはないのだろうか。見た目には美しく、可憐なチョウも、実は農作物をあらす害虫となってはびこることが多々あるのだから。

 

コメント

  1. カンチョー より:

    わしの同級生じゃがな

  2. kf より:

    2万人で、1年分のノルマ達成!だから、あとは休館して遊んで暮らすんだって(・・・これは、胡蝶ならぬカンチョーの夢ですな)

  3. baba より:

    部外者ですが、失礼いたします。先日、ニュータウン展に遊びにいきました。「なんで、ここに蝶の展示あるんだろう」と不思議に思いましたが、ちょっとだけ、意図がわかったような気がしてます。(気がしてるだけなので、又、遊びにいって確かめます)博物館のかんちょ~さんは、もしかしたら、同郷かもしれへん。なんかしゃん、オモッショゲナ人やけん、逢いにいかないかん。かんちょ~さんは、どこに展示されとんやろか(失礼)

  4. okkun より:

    今回の「千里ニュータウン展」では、ウカツながらカンチョーさんの顔写真は展示されておりません。市民委員がウッカリ忘れたためとも、在来種なのか外来種なのか、どちらにも分類できなかったため…ともウワサされております。このため、観客の子供さんに説明をしようとしたカンチョーさんが、なんと職場である博物館内において親御さんに不審者と間違えられるという事態が発生しております。市民委員にも学芸員にも名札があるのですが、カンチョーさんには名札がありません!1部100円の「図録」を受付にてお買い求めいただければ、最終頁にカンチョーさんの顔写真が収録されております。

  5. おかきた’まり より:

    [千里ニュータウン展市民委員会] [2006/05/11 02:29] [ MyDoblog ] [削除] あの~、館長の顔写真はここに↓
    http://www.doblog.com/weblog/myblog/59738/2368147#2368147
    それから、ここにも↓
    http://www.doblog.com/weblog/myblog/59738/2368125#2368125
    だいぶ時代が若くて、わかんないのかしら。【^^;】

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