吹田市立博物館平成20年度夏季展示「千里の竹」
公開シンポジウム「千里をかける竹」
■日時
2008年7月18日(金)・19日(土)
両日とも14:00~17:00
■場所
吹田市立博物館 講座室 (吹田市岸部北4丁目10番1号)
■講師
柏木治次 (富士竹類植物園 事業本部長)
川野和昭 (鹿児島県立歴史資料センター黎明館 学芸課長)
黒田和孝 (奇竹堂・黒田宗傳 茶ノ湯竹器師)
小山修三 (吹田市立博物館 館長)
佐々木長生 (福島県立博物館 専門学芸員)
佐藤洋一郎 (総合地球環境学研究所 教授)
■聴講無料・申込不要(定員120名)
■主催
大学共同利用機関法人 総合地球環境学研究所(地球研)
文明環境史領域「農業が環境を破壊するとき―ユーラシア農耕史と環境」
(略称:里プロジェクト/代表:佐藤洋一郎・総合地球環境学研究所教授)
■プログラム
【18日】 研究発表:竹の文化と民俗
「資源としての竹―竹の特性とその利用―」
柏木治次 (富士竹類植物園 事業本部長)
「ネマガリダケの民俗誌―磐梯山麓の籠屋聞き書き」
佐々木長生 (福島県立博物館 専門学芸員)
コーディネーター:小山修三 (吹田市立博物館 館長)
【19日】 座談会:千里をかける竹
「竹細工と暮らす、竹細工と生きる」
黒田和孝 (奇竹堂・黒田宗傳 茶ノ湯竹器師)
「竹の焼畑―森の再生と持続可能な農耕のかたち」
川野和昭 (鹿児島県立歴史資料センター黎明館 学芸課長)
コーディネーター:佐藤洋一郎 (総合地球環境学研究所 教授)
*各講師のテーマは変更になることもあります。
■企画にあたって
「藪が荒れとるんですわ」――。
今回のシンポジウムを企画するなかで取材に寄せていただいた京都・押小路の奇竹堂で、三代目黒田宗傳さん(19日の座談会に出演される和孝さんのお父さん)が悔しそうにそう言われたのが印象的でした。管理する者もなく荒れつづける里山の実態を端的に示す「竹害」については折にふれ耳にしてきましたが、文字どおり竹に囲まれて暮らす黒田さんの自宅兼工房の古い町家でうかがった「荒れとる」という言葉の響きにはこれまでのどんな説明よりも説得力がありました。
黒田さんのいう「荒れた」藪はマダケの林。モウソウチクによる侵食問題だけでなく、マダケの林自身が手の施しようがないほどに荒れているそうです。放置された古い竹のために新しい竹の生育余地がなくなり、関西近郊の竹藪の多くが漸次衰退の一途をたどっているともおっしゃっていました。そんな中いまもなおほんのわずかな歪みもゆるさぬ黒田さんの仕事ぶりを拝見していると、すみずみにまで竹を活用していたかつての生活がどれほど細やかな精神に満ちていたのかあらためて思わされもしました。それはたんに身の回りの道具に対するこだわりだけでなく、近隣の里山をふくむ住空間全体の配慮にまで及ぶものでした。
環境問題との関連で見直しがせまられている私たちの暮らし――そもそも暮らしを見直すとはどういうことなのでしょうか。本シンポジウムにおける竹をめぐるさまざまな話題が竹の魅力とともに現代の環境問題の本質をうかがう機会になれば幸いです。
(環境思想セミナー企画担当 鞍田崇・総合地球環境学研究所研究員)
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