トイレットペーパー騒動(1973/11/1木曜日)

今晩、NHK総合では、1973年に「千里NTから日本中に広がった」と言われている「トイレットペーパー買いだめ騒動」を取り上げた番組を放映します。この内容を私はまだ知りません。

この「騒動」は、千里NTの生活史を語るうえで欠かせない…と私は考えていましたが、「千里ニュータウン展」で取り上げる予定は、今のところありません。と言うのは、この騒動は「パニック」とも呼ばれており、千里住民のふるまいから日本全国にパニックが広がった…のかも…?という記憶は、あんまり栄誉じゃない記憶でもあるからで、どうも気分が乗らない市民も多くいるようだからです。

ただ、ニュータウン展より少し早いタイミングでNHKが番組にするのであれば、当時を覚えている地元住民の目から、きっちり記録しておくことも意義があるのではないか?と考えました。

当時私は中学生でしたが、この「騒動」は、本当に千里NTから全国に広がったのだろうか?記憶の裏づけと検証のため、私は、1973年11月1日前後各1ヵ月の朝日新聞大阪版の記事を調べてみました。

●その結果、10月後半から、京阪神全般の出来事として、「灯油暴騰」「紙不足・テストでけへん・広報どうしよう」などの記事が断続的に出ており、紙不足への不安はじりじり高まっていた…ことが伺えます。
●10.31の夕刊には写真入りの記事がありました。「大阪市内のスーパーのトイレットペーパー売り場。開店と同時に主婦たちの行列ができ…」と、すでに紙不足が起きていたことが書かれています。ただしそれは大阪市内。
●11.1の朝刊一面には「石油消費を10%以上削減・通産省が第一次試案・電力など供給量規制・マイカー高速道乗り入れ禁止・一般向け灯油は確保」という大きな記事があります。
●11.1の夕刊には特に記事はありませんが、明けて11.2(金)の朝刊には「千里タウンから消えたけど…トイレ紙不足本当なの?調べたら生産増・在庫もたっぷり」とあり、はっきり「千里」と出てきます。
●このあと数日間、「トイレ紙緊急輸送・買いだめやめて」「あすから18店で販売・京阪神緊急輸送のトイレ紙」「お待たせトイレ紙行列すぐ解消・のこり山なす」「トイレットペーパー・投機防止法の対象に」といった事態沈静の記事が矢継ぎ早に出て、一週間を過ぎると紙騒ぎの記事はなくなってしまいます。

緊急輸送の18店には、千里NTのスーパーも入っています。当時、他の重大記事は金大中拉致事件。やたらとマンションの広告が多く(しかも今と比べてもそんなに安くなく)地価狂乱が始まっていたようです。

これらの報道から考えるに
■10月中旬から、オイルショックに続く社会の不安感は十分醸成されていた。
■紙の品薄・買占めは、散発的には千里以外の京阪神全般で10月下旬から始まっていた。
■ただ、一番わっと「現象化」したのは、11.1、千里NTでだった。
■その騒ぎ(報道)は約一週間で沈静化した(少なくとも京阪神では)。…ようです。

●しかし「なぜ千里NTで一番現象化したか?」という謎は、やはり残ります。
◎これを「新しい町でコミュニティ力が弱かったから」と考える方もおられるようですが、騒動のさなかに暮らしていて、今度の博物館の活動で町の勉強もしてみると、私が考える大きな理由は、次の2つです。

1.千里NTでは、同じ世代の住民ばかりを集中的に入れた結果(メインの主婦は1973年当時30代中心)、口コミ情報が回りやすく、かつお母さんはまだ若くて行動力もあった。

つまりコミュニティ力はむしろ非常に強かったから、「奥さん、大変よ!」と話が広がったのではないか?それは多少軽率だったかもしれませんが、コミュニティを一所懸命作ろうとしていた住民感情、団結心の現れだったんじゃないか?しかも当時の子供は10歳前後が中心。NTに子供の数が一番多い時代でした。NTの人口がピークに達したのは1975年で、この騒動のわずか2年後でした。

2.カンチョーさんほかも指摘されていましたが、「千里NTは当時珍しい下水道100%完備の町だった」。

新聞紙じゃ代用が利かない。ないと一日でも困る。(特に団地では)詰まらせたら同じ棟の人にすごく迷惑。大変ダー、という心理になった…かもしれません。

社会史的に面白いのは、高度成長の申し子とも言える千里NTから、高度成長のつまづきを告げる事件が広がった…ということなのですが。

それにマイカーの普及率も今ほどではなかった時代、主婦にできたのはせいぜい「両手にいっぱい」買うぐらいだったと思います。

結論:千里住民の当時の行動は、なんら恥じることはない。条件が揃いすぎていたのです。さて、NHKがどんな検証をしてくれるのか?

(by okkun)

コメント

  1. okkun より:

    NHKの番組は、前向きなまとめで安心しました!番組内に出てきた当時の写真は、大丸ピーコック千里中央店でしたね。ただ日付は「10.30」となっており、10月は31日までありますから、わが家の記憶で北千里で騒ぎになった「11.1」とは2日ずれています。(NHKの番組告知サイトでも「11.1」となっていたのですが…。)千里中央と北千里では、行列のできた日が違っていたのかもしれません。それにしても番組に出てきた千里住民は皆さん明るくて元気ですね。「トイレを詰まらせたら汚水があふれてスリッパがプカプカ…」とか、このあたりの描写力は大阪の人はピカイチなんじゃないでしょうか?東京の人だと格好つけちゃって、こういう喋り方はしないような気がします。

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