人はいつ景観を描き始めたか

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今、最も古い絵は75,000年前の幾何模様で、アフリカのブロンボス遺跡から出土したベンガラの表面に描かれたものだ(海部陽介 2005:『人類がたどってきた道』 NHKブックス)。約3万年前から、ヨーロッパで突然、写実的な絵があらわれる。アルタミラやラスコーの洞窟壁にかかれたマンモス、トナカイ、ウマ、バイソンは、これが2万年前に描かれたものかと目を疑うほどだ。ほかに、ヴィーナスとよばれる女性像をつくっている。しかし、ふしぎなことに植物は描かれないのである。

『ヒトは花をなぜ愛でるか』のシンポジウムをしたとき(2007、八坂書房)、みんなで探し、議論をしたのだが、花(植物)の絵が最初に現れるのは、メソポタミア文明だった。風景はピラミッドの石室にあるぶどう園やナイル河の岸図がそれとみえるが様式化が強く、今日の私たちの考える風景画にもっと近いのは、ローマ時代の「リヴィアの家」のフレスコ画だとおもう。

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ひるがえって、日本はどうか。旧石器時代にヴィナス系の女性像があらわれ、縄文時代の土偶に続く。動物ではイノシシ、ヘビ、クマ、シャチなど。植物では針葉樹らしいものが、東北地方の縄文中期(4500年前)土器に描かれた狩猟図のなかにある(もしそうならエジプトより古いことになるのだが)。

6世紀になると、仏教(橘夫人厨子、法隆寺金堂壁画)や道教(平城宮跡の木簡の落書き、キトラ古墳の「星」も?)などの風景があらわれるが大陸の影響下のものだ。その後も絵画資料は少ないのだが、平安時代末からの絵巻物の登場によって資料が飛躍的に増える。日本の風景を描くことも絵巻からはじまったような気がする。

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吹田でもっともふるい風景画(強いて言えば)は中世の荘園図。田畑の区割り図のなかに、一本の木が描かれている。区割りの目印となるもので、同時代の類例は多く、木のほかに山や岩をかくこともある。

絵の歴史を見ると、人間はセックス(子孫繁栄)、美味な食べ物、権威とカネというじつにザンナイのにしか興味がなかったとおもう。しかし、そこから芸術や美意識という高尚なものが現れるにはずいぶん時間を要したのである。

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じつに、おおざっぱなもので、もっとべんきょうしなくっちゃとおもっています。
(カンチョー)

写真上: 『世界美術大全集 西洋編 第2巻』小学館 1994より
写真中:青森県埋蔵文化財調査センターHP(http://www.ao-maibun.jp/index.htm)より
写真下:吹田市立博物館HP(http://www.suita.ed.jp/hak/ten/024_066/ten_p064.html)より

コメント

  1. きょうちゃん より:

    少々、以上・・{ピンピンガエル}をメイシアター見てきました。<映画・{不都合な真実}> こわ!! <ゴア>。 1200円は?。 アバウト10年前かな・・結構・・企業の危機感を煽る 言葉で・・wake up。 07EXSPO70-私と万博-で、このあたりを書けば・・・ 「エコロジー」よりも「エコノミー」。 ○×(^_^;)(^_^)/~ そろそろ爆睡の時間。

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