梅棹先生と情報:万博を生産した書斎

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11月9日(金)。梅棹先生が、体力に自信がないので・・・と来られませんでした。そこで、特別ゲストの中野さんの他、フロアにいらしてた片寄さんに急遽くわわっていただき、梅棹先生のことを中心に鼎談形式で話をうかがいました。フリートークで大変おもしろかったのですが、ここでは要点だけを紹介します。

片寄 京都の北白川にあった梅棹邸では、月に2回金曜日の夕方、誰でも参加できる会をひらいておられました。貧しい学生だったぼくは、入り浸っていましたねー。細長い部屋に、ずらーっとみんなが座って、わーわーいいながら、酒飲んだり食べたりしている。そこへ、リュックを担いだ人が、今、ヒマラヤから帰ってきましたと突然入ってくる。高校生が熱気球を上げるにはどうしたらいいかとか、シベリアの犬ゾリはどうなっているとか、議論してると、梅棹さんが、とんとんと2階へ上がってすっと資料を出してくる。すごいなーと思いました。梅棹さんの包容力と平等の精神が、若者の「知」を育てる環境をつくり、情報源ともなったのでしょうね。そしてなにより、情報処理の方法が見事です。
・・・・のちにアフリカの村で家を建てた時の記録「ブワナトシの唄」を本にしたのですが、大変お世話になりました。始めに原稿をお見せしたら、しばらくたってカナタイプで「コレデハアカン」、がっかりして投げ出してたら「マダデキナイノカ」。だいぶしぼられました。
・・・・万博の時は、その経験を買われて、仮面の収集に行きました。それらは今ミンパクに展示されていますよ。

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中野 82年の夏、外務省の外郭団体から、梅棹忠夫博士のオーストラリア視察に同行してくれないか依頼を受けました。シドニーのエンジニアリング会社の技術部にいたのですが、アボリジニのことをガンガン調べていたので、目をつけられたのだとおもいます。中学生の時から『知的生産の技術』や『モゴール族探検記』を読み始め、大ファンだったので、喜んで引き受けました。しかし、それってずいぶん昔のことだから、先生が飛行機から降りて出てこられたのを見て、思わず「先生って、まだ生きてたんですね」と言ってしまった。「ひと、勝手に殺すなー」っと梅棹先生が答えられたのが最初の会話でした(笑)。
・・・・それかから3週間の珍道中。先生は本当によく酒を飲まれてました。夕方、調査を終えて切り株の上にバケツ置いてあるだけの野外レストランで話をしながらしたたかに飲み、部屋に戻ろうとしたら、「あんた、帰るんか。愛想ないなー」、そして部屋の冷蔵庫あけて「ほら、毒だらけやでー」といってまた飲む。ところが、朝は「先生、行きますよ」というと、「かんにんしてー」(笑)。昼は調査地のパブで、ぼくは喉乾いているから、ビールをたのむ。先生は、「わたしはやめときますとオレンジジュース」、ところが、うまそうにぐびぐびと飲んでいると、「おいしいですかぁ。やっぱりわしもー」と飲み始める(笑)。
4時には調査終わってホテルに帰ります。夕食の前にそろそろ用意してくださいとお迎えにいく。・・・・すると、京大式カードでメモを書いていらっしゃるのです。京大型カードでメモつけているところをはじめて見ました。持ち運びに便利な1枚がうすい特注品でした。それにどんどん書いていく。で、「ちょっと待ってください。今、ここだけまとめてしまいます」といって、ワンフレーズ、ワンフレーズ、ぱっとめくって、インデックスつけておられました。そのシーンを見て、あ、本当にこうやっているんだと感動しました。

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小山 中野さんはコンピューターで『知的生産の技術』をこころみられましたが・・・

中野 先生がやっておられたように、1データ1枚。そしてインデックスをつけてデータベースにする。これはおおよそコンピュータに置き換えてうまくいったと思います。
京大型カードを自分でやりはじめて思ったのは、このインデックスをつけることが意外に難しいこと。今思えば、それはキーワードづくりだったわけです。一番重要なのは、キーワードを考えることなんだということが印象的でした。
・・・自分でパソコンを使ってやりながら、どうしてもこれは本物のカードを乗り越えられないなと思ったのは、モノを貼れないことです。これをどうやるか、未だに悩んでいるところです。
梅棹先生は、パリのホテルのトイレットペーパーと、マッチ棒のコレクションを、カードに貼って整理されているのです。最初は、なんだこれ、と笑ってしまいました。しかし、インデックスとして、年代と日付とホテル名がつけられている。見ていくと紙の質が変わっていくのがわかる。すると、フランスの製紙産業が変わってきていることが読み取れるのです。1枚だけみると、ただ可笑しいだけなのですが、1000枚並ぶと産業のデータです。ハードウェアのデータは、こうあるべきだと思いました。

小山 今度は吹田の博物館で、梅棹忠夫展をやりたいですね。中野さんも、梅棹忠夫展をやるならば、アドバイザーにぜひ入れてくれと言っています。今日は、みなさん、ありがとうございました。

(こぼら、カンチョー)

 

コメント

  1. 団塊の婆 より:

    こんなおもしろい話をなぜ平日になさるのか…悔しい。

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