「吹田市の自然物語」09年8月23日(日)講演「吹田の地盤と防災」

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 講演に先立ち、西川副館長より「吹田市の自然物語」開催の挨拶と秋元宏吹田地学会会長より趣旨説明が行われた。

■地震の事例からみる人が住み、暮らす場所

 中川先生は講演で述べる項目
(1) 最近起こった大地震 
(2) インドネシアの巨大地震・津波 (ビデオ) 
(3) 地盤特性と地震被害 
(4) シナリオ地震と地震予測 
(5) 地震を音として聞いてみよう
  をパワーポイントで示した。

 09年4月16日、中央イタリアで起こった地震の惨状をスライドで示し、地震計の波形分析、プレートの変動から説明した。断層模型を示し、岩盤が切れる状態を解説した。地下での断層面―「アスペリティ」の傾きによって起こるエネルギーを出す場所の解析から判ることについて説明した。
08年5月28日の四川省大震災では中国とその周辺のプレート運動を図示して説明した。さらに、ペルー地震の倒壊と地震の波形の意味を述べた。

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■盛土の危険性
07年の新潟中越沖地震では1回地震が起これば「安心」といわれたが3年前に近くで地震が起こっており、関係者にショックを与え、柏崎原発の事故にみられた場所は当時は活断層がないと言い切った人が多かったと述べた。

この地震の被害が集中した場所は盛土をした造成地で倒壊、地滑りなど地盤災害が特徴であったと説明した。石
川流路と液状化による構造物の沈下が起こっており、谷を埋め立てた所は人が住む所ではなく、まして公共施設の建設は避けるべきであると警告した。
04年10月23日の中越地震では山間部の道路が崩壊した。宅地造成と同じように道路を水平にするため盛った所が崩落した例をあげた。

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■活断層の調査と家屋の被害例
 日本では地質学者が路頭を調査し、2,000本の活断層をあげている。しかし、湖の底、平野でも調査ができない場所がある。横にずれる断層はわからない。能登半島地震、福岡玄海島の例をあげて、家屋被害などの様相をスライドで示した。
日本の家屋は台風で屋根が飛ばされないように屋根に土をのせる。そのため上に揺れる激しい地震の場合、壊れやすい。耐震設計構造の新しい住宅家屋では被害が少ない。木造住宅では阪神大震災では火事が発生し、ライフラインの水が遮断されて、鎮火できない事態となった。
■大阪の地盤構造をみる
 大阪の地盤構造から被害が「首都直下の3.5倍最悪4万人死者」と、見積もられている。地下構造の違いによる不均衡、震源の特性、地震波の伝播経路、岩盤の性質、建物、構造物への岩盤の影響などから説明した。太平洋プレートの影響を受ける東日本とフィリピンプレートの影響の西日本の違いと逆断層の分布を示した。活断層が密集する淡路島、伊勢湾、駿河湾の近畿トライアングルと大阪と周辺の活断層を図示して、地殻の動きについて説明を加えた。
■ドキュン 地震の音を聞く
 突き上げるたてゆれとよこゆれの地震の音が会場に響いた。各々の地震波の揺れによって音の大きさ、長さ、鋭さなどが違っていた。地震の音を耳にして参加者は驚いた。

■目の前で建造物が倒壊する液状化実験

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 質疑では、10~20年後に起こるといわれる南海地震による湾岸への津波の影響について質問がでた。盛土された堤防の液状化による水害が懸念される事態に意見が交わされた。
上町断層と佛念寺断層が動いた年代についての質問では、データ上判らないと中川先生は答えた。活断層の分布がグーグルの地図で出ており、家屋の近くの上を走っているとの質問について、地震は深いところで発生し、不確定要素がある。盛土の所は危険であると答えた。

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複合的な災害状態への対応と避難方法について秋元吹田地学会会長から説明が行われた。

この後、中川先生は地震による液状化実験を行なった。高速道路や建造物が参加者の目の前で倒壊した。地震のすごさをつきつけられた。

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     (作成 M)

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