市民委員から見た万博展(館報より) 2/4

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前回からつづく)

市民委員会の葛藤
このような市民と市の「以心伝心」があって?万博展の市民委員募集が2007年新春から始まった。しかし実のところ、千里ニュータウン展の市民委員経験者には、応募に乗るかどうか、とまどいも大きかったように思われる。つまり「何もかも未経験」でただ好奇心を原動力にとりくんだ千里ニュータウン展委員会スタート時とは違って、こんどは大きな先行事例があり、その記録はあまりにも突出していて、展示にせよ催事にせよ広報にせよ、寄せ集めの素人集団が成果を出すことがいかに大変なことか、いかに時間を取られ、私生活や仕事に犠牲を要求するものか、経験者は知ってしまっていたからである(完全無償であったことに疑問の声が全く出なかったことは、考えてみればすごいことだ)。それだけの労苦を投入して、期間が終わったらまた博物館には閑古鳥が鳴くのではないか…?千里ニュータウン展は結局、底が抜けたバケツに勢いよく水を注いだようなものではなかったか?バケツの底はふさがったのだろうか?千里ニュータウン展の市民委員会は終了とともに潔く解散してしまい、公式の総括は行われていなかった。総括をしないうちに「二度目」をやって上手くいくのだろうか…?

結果、千里ニュータウン展44名の市民委員のうち、18名が再び万博展の市民委員として立候補した(自営で2回入った人がほとんどいなかったことは象徴的である)。ここに初参加の委員14名が加わり、万博展の市民委員会は最終的に総勢32名となった(このほかに万博についての専門的知見を持ったアドバイザー2名が加わった)。千里ニュータウン展と比べて、ざっと2/3のマンパワーで、一匹目を超える二匹目のドジョウを狙ったのが、万博展市民委員会だった。千里ニュータウン展と同じく「展示」「催事」「広報」の三部会制としたが、少ない人数で回すため、「広報」は「展示」「催事」と兼任とし、実質は二部会であった。

「人数の問題ではない。実質稼働率が高ければいい」と意気がってみたものの、市民委員は誇り高き無償ボランティアであって、ほかに生活もあれば仕事もある。自動的に少数精鋭になるといった都合のいいメカニズムは働かず、やはりマンパワーは人数と比例した。一方で「千里ニュータウン展を超える」暗黙の目標値は委員各自がやはり持っていたのではないだろうか。「もう、あんなに人を集めなくていいですよ」と口では言いながら、イベントをやれば人が来ることは前回の経験値からわかっていたから、千里ニュータウン展以上の催事を週末に突っ込んだ。週末では日数が足りずに平日にも突っ込んだ。展示部会では特別展示室とロビー前を使うことは言うまでもなく、常設展示室を全部つぶして使い切ることが最初から意識された。千里ニュータウン展のときは展示企画を進めるうちに「やむなくはみだして」常設展示室の一部を使ったのだが、今回は最初から、しかも一部ではなく全部の常設展示室を使うプランが作られた(最終的には全部とはならなかったが、前回より広いスペースを特別展示に転用した)。委員の人数が少ないのだから企画も縮小していい…とは(誰か言ったかもしれないが)まったく逆の方向に全体は動いた。

結果、へとへとになった。あたりまえだ。それでもなんとか格好がついたのは、セミプロと言えるアドバイザーの存在と、やはり2回目の経験値で無駄な逡巡が少なかったことによるのではないだろうか。つまり「恐いもの知らずの素人集団のハチャメチャパワー」というユニークさからは、いくぶん遠のいた部分があったようにも思える。これが万博展が千里ニュータウン展と比べた時の弱みであり強みだった。

もうひとつ非常に面白かったことは、準備後半になって、万博展で初めて市民委員に立候補したメンバーが、がぜんパワーを発揮し始めたことだった。万博展委員会スタート時は、当時31名の市民委員のうち、過半数の18名が千里ニュータウン展からの「旧知の仲」であり、千里ニュータウン展と万博展の両委員会は、形式は連続していない別個のものであったが、実質は「常連に新顔が加わった」ような雰囲気があった。千里ニュータウン展の市民委員会はあまりにも盛り上がったため(仮に同床異夢であったとしても)、やはりそれだけの絆は育っていたのだと思う。それだけに「万博展から加わった」メンバーは当初はやりにくそうだった。ところが準備後半に入り、千里ニュータウン展からの市民委員が疲労困憊、ヤキが回ってきたのと入れ代わるように、慣れてきた「新顔委員」は表情が生き生きとして油が乗ってきた。まさに生態系の不思議を見るような思いだった。やはり素人は新鮮でなくてはならない。それこそが命である。こう考えると市民委員を常設化することは自己矛盾ではないか?という疑問にもつきあたる。新鮮さと熟練を両立できたら、それはプロではないか。いま博物館が求めているのは、素人なのか?プロなのか?

万博展の来館者数は、15,055名。やはり44日間で通常の来館者の1年分以上を集めたが、千里ニュータウン展の22,170名に比べると、約2/3の入りとなった。つまり市民委員ひとりが集めた人数に換算すると、前回とほぼ同等。千里ニュータウン展を「超える」ことはできなかったが、「奮闘」と言えるのではないだろうか。

(つづく)

(by okkun)

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