博物館には権威主義的なところがあり、ふつう、資料はケースのガラス越しに見るようになっています。だから、視覚障害者がいけば、博物館とはひらたく、冷たい、つるつるのガラス板をおいたところだと、きっとおもうでしょう?視覚障害者は排除されているのです。
私が吹田市立博物館の館長になったとき「展示をさわれるものにしたい」と考えました。
小学生を対象にした「むかしのくらしと学校」、「吹田の自然展」、「千里ニュータウン展」とかでは、できるだけ触れるような展示に努めているのですが、ほかに実験的試みとして「さわる-五感の挑戦」を2006年からはじめました。それ以来、アドバイザー役になっていただいている広瀬さんは、民博で企画展「さわる文字、さわる世界─触文化が創りだすユニバーサル・ミュージアム」(2006.3.9~9.26)、「点字の考案者ルイ・ブライユ生誕200年記念・・・点天展・・・」(2009.8.13~11.24)をやり、ユニバーサル博物館についての国際シンポジウムを主催するなど「誰もが楽しめる」、あるいは「障害者に対して十分な配慮」のある博物館づくりをふかく考えていました。
その実現のためには「実際に試すことがぜひ必要」ということで 「科学研究費補助金 基盤研究(C) 誰もが楽しめる博物館を創造する実践的研究-視覚障害者を対象とする体験型展示の試み」を申請したところ、さいわい採択されました。そこで、本年は2回の研究会を行います。
第1回は今週末、1月29~31日まで、三内丸山遺跡にでかけて研究会を開きます。収蔵庫にあるたくさんの資料を直接さわらせていただき、その感覚を視覚障害者が粘土で表現する(青森盲学校の生徒も参加します)。そのあと、ユニバーサル・ミュージアムについての討論をおこないます。青森県はいま三内丸山の世界文化遺産指定に向けて積極的に動いており、県教育委員会、マスコミ、遺跡ボランティアの皆さんも協力的です。研究会の一部(1月30日10:30~12:00の講演会)は一般公開されます。
第2回は東京、3月5日に国際基督教大学の湯浅八郎記念館で民芸品や考古学資料のコレクションをさわらせていただけることになりました。また同大学でとりくんでいる視覚障害のある学生への学習支援活動などのレクチャーも考えています。
この研究によって ユニバーサル・ミュージアムの一つの例を作り、博物館のあり方にインパクトを与える、それがこの研究の目的だと考えています。
●青森研究会のスケジュール
1月29日(金)13:30~17:30
展示室収蔵庫実地調査「縄文との接触–三内丸山遺跡のタッチツアー」
〔キーワード:触学〕
1月30日(土)10:30~12:00 公開講演会 申込不要・聴講無料
「さわる力、さわる心–だれもが楽しめる博物館を創造するために」
(現代を生きる縄文人・小山修三と自称「琵琶を持たない琵琶法師」広瀬浩二郎の触文化をめぐる対話)
〔キーワード:触楽〕
場所:縄文時遊館シアター
13:30~16:00 体験講座「縄文の感触–さわって知る土器、つくる土器」(青森盲学校の生徒対象)
〔キーワード:触愕〕
作陶指導 誉田実(ほんだみのる)(陸奥美窯・青森で遺跡調査、縄文土器の研究業績がある陶芸家)
16:30~18:30 討論「触発される身体–“学”“楽”“愕”をつなぐもの」(2日間のまとめ)
1月31日(日)
フィーリングワーク「縄文から未来へ–感覚の多様性を呼び覚まそう」
国際芸術センター青森および青森県立美術館などの見学と意見交換
(カンチョー)
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