勤労感謝の日の午後、講座室で産業技術総合研究所研究員の寒川旭(さんがわあきら)さんが「地震考古学から21世紀の地震を考える」という講演をなさいました。
寒川さんは1988年に地震考古学という分野を提唱しました。地震考古学とは考古遺跡で発見された地震の痕跡から地震の発生時期、地変の様子、生活への影響などを総合的に研究する分野です。
地震には活断層で起きるものと、プレート境界で起きるものとがあります。プレートとは地球表面を覆うたまごの殻のような地盤で、日本列島に潜り込んでいます。そのスピードは手の爪がのびるくらいの早さで、年間5~8cmくらいでしょうか。でも100年では5~8mとなるので約100年ごとにその境界面で地震が起きるのです。
一方活断層に加わる力はプレートよりは弱いのでエネルギーがたまるのに時間がかかり、活断層が動く周期は1000年~3000年くらいといわれています。阪神淡路大震災を起こした淡路島の野島断層の調査で野島断層が前回動いたのはAC1世紀ということは約2000年前でした。したがって次回阪神淡路大震災と同じ原因で起きる地震は2000年先と考えられます。
日本には古文書がたくさんあって過去の地震の記録が整ってはいるのですが、記述されていない地震もあるはずです。とくに江戸時代以前の地震の記録は現在わかっているもの以上には出てくる可能性は少ないでしょう。今後この空白を埋めてくれる資料がでてくるのでしょうか?
上の表でABは南海地震、CDは東南海地震、Eは東海地震をあらわしています。江戸時代以後は南海+東南海地震が(1~2年くらいのズレはあっても)ほぼ同時におきています。しかしそれ以前の記録では半分の地域の地震しか記載がないのです。これは不自然です・・・そこで
阪神淡路大震災で有名になったものに液状化現象があります。その時に砂が噴出します。遺跡でこの砂の噴出=噴砂=を確認できたら「そのとき大地震があった」と言えるでしょう。つまり考古学の遺跡発掘調査の現場で液状化現象に伴う砂の噴出:噴砂の跡を調べると大地震のあった時代がわかってくるのです。
高知県四万十市の遺跡で1498年の噴砂が確認されたため古文書には見られなかった南海地震が四国西部で起きていたことがわかったのです。つまり前の表の空白が埋まりました。
そのようにして今までに300の遺跡で噴砂がみられ、表の空白部分が次々と埋まりつつあります(下表の赤印)。
1995年の阪神淡路大震災は活断層が動いて起きたもので、規模はマグニチュード(M)7.3でした。しかしこれから必ず起きるであろう南海+東南海地震の規模はM8クラスなので規模は阪神淡路大震災の50倍から100倍です。しかし震源は淡路島よりはずっと遠いので突き上げるような揺れはないでしょう。
(直下型の)活断層で起きる地震は突き上げる振動につづいてガタガタガタと細かい揺れが20秒ほど続くのに対し、プレート境界で起きる地震は(ゆーらゆーらと)ゆったりとした揺れが長々と5分くらい続きます。高層建築は振幅が増幅されてよく揺れることでしょう。
これらを頭に入れつつ個人も行政も対策をとっていかなければならないのです。
「大阪が21世紀に巨大地震に見舞われることは間違いない。」
少なくともこれだけは確実に言えます。
(おーぼら)
コメント
香川県は難しい事象を 素人にもわかりやすく かつ面白く解説していただける学者センセイが 多く輩出されている のが実感できました
日本一小さい県なのに よう~~がんばる!