奥村弘先生の講演会につづいて11月6日(土曜)午後3時から講座室で、ワークショップ「水損史料の応急処置実習」がありました。
はじめに歴史資料ネットワークの河野さんがネットワークや水損史料の応急処置の方法の説明をしてくださいました。
歴史資料ネットワークは歴史研究者や博物館や市民で構成され、阪神淡路大震災から活動を続けてきたボランティア団体です。2004年からは水害被害から資料を守る活動もはじめました。2009年佐用町での水害被害に対しても活動しました。
説明の後、水につかった資料を乾かし、資料を救うやりかたを実習しました。
おもな作業はキッチンペーパーで水分を取ることなのです。実際は泥水に生活排水も混ざった水につかったものなので、48時間から72時間でカビが生えてくるのでカビへの対策が大切になります。
以下、歴史資料ネットワークのホームページからの抜粋です。
<水害と紙資料>(全史料協防災委編『文書館の防災に向けて』1998より)
・水害は紙資料の水損を生じさせることがあります。
・浸水は下から進行します。
・水分は毛細管現象により紙に吸着します。
・水を完全に吸った紙資料は膨張し、重量も元の数倍になることもあります。
・濡れた紙は非常に柔らかくなり、裂けやすくなっています。
・製本されたものは、のり部分が剥離しやすくなっています。
・48から72時間でカビが生じることがあります。
・そのまま乾燥すると紙の変色や変形が生じます。
<水損資料救助の方法>(同上)
(1)凍結
・方法:透明なプラスチック袋またはラップ、フリーズ紙を用意し、納入する。
・可能な限りそのままの状態で、凍結させる。
・利点:水損資料は、凍結することで紙の変形や文字のにじみ、カビなどを防止できる。
(2)真空凍結乾燥法
・方法:完全に凍結した資料を、真空凍結乾燥機に入れ乾燥させる。
・利点:紙が再度濡れることなく、凍結状態のまま乾燥する。
・欠点:真空凍結乾燥機が普及していない
(3)(凍結)吸水乾燥法
・方法:ごく一部またはかすかに湿っている資料に適応する。特に1枚資料。
・解凍は処理可能な量だけとし、完全に解凍してから着手する。解凍するときには、吸水紙や高分子吸収剤を敷く。
・直射日光の入らない、風通しの良い、温湿度の低い部屋で実施する。
・丁間に吸水紙(ろ紙)などをはさみ、状態を見ながら何度も交換をおこなう。
・同時に重しをかけて、しわの発生を防ぐ(押し花の方法)
・利点:比較的処理単価が安い。
・欠点:乾燥に失敗すると、紙の変形や文字のにじみ、カビが生じる。
(おーぼら)
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