世界の万博跡地を訪ねて(14) …ブリュッセル万博

海外特派員報告、今回はベルギー。ベルギーと万博はあまり結びつかないかもしれませんが、実は過去にさかのぼると万国博覧会国際事務局(BIE)が承認しているもので計6回も開催されています(1897年、1905年、1910年、1913年、1935年、1958年)。

人々の記憶に新しいのは1958年に首都ブリュッセルで開催された万博。これは戦後初の万博で、テーマは“A World View – A New Humanism”(ちなみにここで言うヒューマニズムは日本語の「人道主義」というよりは、人間中心主義 ~超自然的な力や権威よりは、人間の尊厳や理性を重視する立場~ の意が強いかと思います)。
186日の開催期間中に4100万人以上が訪れたとのこと。会場となったブリュッセル郊外のエゼル公園は1935年万博が開催された場所で、いくつかの建築物は1958年万博の際に再利用されました。

大阪万博の太陽の塔のように、シンボルの役目を果たしたのがアトミウムと呼ばれる建築物(英語版Wikipediaより)。

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鉄の原子構造を模したものですが、実際は高さ103m、ひとつの球が直径18mという巨大なものです。各球を結ぶパイプにはエスカレーターが通っており、球内は展示場やレストランとして利用されています。現在も街中ではアトミウムの模型やデザインをあちこちで見かけることができ、小便小僧に匹敵するブリュッセルのシンボルとして人々に親しまれています。

2008年には万博50周年を記念して「EXPO58 ~理想と現実~ “Between Utopia and Reality”」という展示会がアトミウムで開催されました。当時の熱気を写真や映像、品物、模型などで紹介するとともに、1950年代の世相やライフスタイルを展示し、当時を知る世代だけでなく、若い世代も多く訪れ、大変盛況だったそうです。

1950~60年といえば、特に欧米先進国がかつてないほどの高い経済成長を示していた頃。科学に基づき新たな技術が開発され、工業が右肩上がりに伸びていました。昔も今も、万博のひとつの面として最先端技術の展示がありますが、このブリュッセル万博のあたりから、万博のテーマが「技術、工業」といったものから「人類、地球、環境」といった、より上位概念のものに変わりつつあるように見えます。1970年の大阪万博は「人類の進歩と調和」、2005年の愛知万博は「自然の叡智」でした。
20世紀半ばまでは科学技術の発展それ自体が達成すべき目的でしたが、今はそれを手段として何をなすべきかを考える、というのが万博のテーマに織り込まれています。
万博のテーマの移り変わりから時代の流れを俯瞰するのも面白いかもしれませんね。

1958年のブリュッセル万博の様子をまとめたサイト。
http://users.skynet.be/rentfarm/expo58/index.htm
個人サイトです。どこの国にもマメな万博好きがいますねー。
ちなみに余談ですが、EXPO’70のように”EXPO”という通称がはじめて使われたのは1967年のモントリオール(カナダ)かららしいです。

(タケル)

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今回、タケルさんは特派員で行ったものの副業(?)がたいへんお忙しいということです。ビールもおもしろい話がいっぱいあるそうなので、楽しみにしているのですが…

コメント

  1. okkun より:

    マニアの道は万国共通ですね…ところでEXPOという通称は1967年のモントリオールからだったという話、大阪万博のマーク案も「JEXPO」と書かれた案があるのを見たことがあります。まだ固まっていなかったのかも。ちなみに「エキスポ」も最初は「エクスポ」って書いてたのにある時点から一斉に「エキスポ」に変わったのを覚えています。(会期前の話)

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