東日本大震災: 青森市からのメール

昨年度から実施している「誰もが楽しめる博物館を創造する実践的研究-視覚障害者を対象とする体験型展示の試み」という広瀬浩二郎民博准教授を代表とする科学研究費補助金のプロジェクトの平成22年度第2回目の研究会が、3月12~13日の日程で、美濃加茂市民ミュージアムで開催されました(先週末の「美濃加茂なう1~3」がそれです)。
ところが、今回の研究会は、前日に大地震がおこっため、参加予定メンバー数名が出席できませんでした。その一人、青森盲学校におつとめのTadashi@くじらさんからメールをいただきました。

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まず、はじめに宮城、岩手、福島、茨城などの被害の大きさには本当に心を痛めています。心よりお見舞い申し上げます。またなくなられたかたには心よりお悔やみ申し上げます。

青森県での被害は太平洋側の八戸市や三沢市が主で、青森市の被害は表向きにはほとんどありませんでした。私の部屋ではポットが落ちた程度でした。
しかし、本震当日から翌日の昼過ぎまで停電しました。
鉄道はストップしてしまい、私が勤務している盲学校の寄宿舎生や通学生は帰宅できない生徒も多くでています。
寄宿舎生の中には八戸市等の被災した地区出身者もいます。
ライフラインが比較的良い青森市にいた方が生活面では良いのですが、やはり、家族と会いたい、実家の周辺はどの様になっているのかといった不安が多くあります。

青森市では12日に停電が回復し、普通の暖房やパソコンが使えるようになりました。発電所の状況等をみて2日間は覚悟しておりましたが、1日の停電ですみました。電気のありがたみには本当に感謝しました。
しかしながら新幹線・在来線はまだ多くが止まっており、飛行機は満席状態です。停電復旧直後、その影響か?近くで火事がありました。

今回の停電でいかに我々の文明や便利なものは電気に頼っているかがわかりました。かなり考えさせられました。例えば私は鍋でご飯を炊くことができますが、電気炊飯器でないと炊けない人は大変ですよね。盲学校の寄宿舎では、たまたま一人の高校生の生徒が鍋でのご飯の炊き方を知っていて寄宿舎の生徒がご飯を食べることができました。

また、暖房に至ってはもっと深刻で現在の暖房機はほとんど電気に依存しています。私は非常時のために電気を使わない灯油のストーブも用意していたので助かりました。私の分は近くの人に貸しました。上に住んでいる同僚が1つ持っていたので、それで2人で暖を取っていました。それでも結構寒かったです。(文化鍋、カセットコンロ、電気の使わないストーブは貴重でした。鍋でのご飯の炊き方はインターネットにいろいろあるので、非常時のために普段から参照して試してみるとよいです。)

夜は暗くて何をするにも大変でした。先ほどの同僚(全盲)は、部屋を片付けていたそうです、私はローソクと懐中電灯で本すら読めませんし、部屋を片付けるなんてとうてい無理です。
その方は、余震で揺れると非常に不安になると話していました。実家は宮城県で、近くでは大きな津波の被害があって、家のそばの公民館には犠牲者のご遺体が運ばれているそうです(その方のご家族は無事)。また交通途絶で仙台市内から家まで十数キロ歩いたと聞きました。なかなか実家と連絡をとれない状況にあり大変心配していました。

話は変わります。うちは光電話なので連絡が携帯電話しか方法がありません。
電池の充電にいろいろ工夫しました。たまたま今回の研究会に行くのに充電した予備の携帯の電池を3つ用意して、さらに単三の充電池をストロボ用に充電していたので助かりました。一般加入電話は停電に強く、さらに優先して通話できるので、これから見直されると思います。もちろん落ち着いたら加入電話復活させます。

それでも、日本人がすごいのは、こういう大災害でも略奪や暴動はほとんど起こらず、整然と並び、肩を寄せ合ってがんばることだと聞きました。私たちはこの誇りを失わないようにしたいと思いました。

宮城県や岩手県には私の知り合いもたくさんいます。連絡とれない人もいて心配してます。その地域では依然として停電が続き、明日から寒くなるとも聞いています。
また、食糧やガソリンの確保が全国的に難しくなるとも聞いています。視覚障がい者や聴覚障がい者などにきちんとした情報が伝わり、手に入らないという状況にならないことを願っています。

研究会にお話を戻しますと実は青森でも県立美術館と青森大学の先生が協力して、視覚障害者に対する美術教材の作成という取り組みを行っています。今回、その成果の一端を研究会の方に送ってご意見を伺おうとしていたところです。今回の災害で物だけが行ってしまい申し訳ありませんでした。
この美術教材を含め、視覚障がい者の美術館利用に関する展示の機会が青森でもあるようです。このユニバーサルミュージアム研究会の成果も一緒に発表できればと考えています。作品全部という訳にはいかないそうですが、一部の作品とこの研究会の趣旨程度はスペースがありそうです。

最後に、研究会の皆様にはご心配いただきありがとうございます。二次会の夜に電話をいただいたときには本当に感激しました。

(Tadashi@くじら)

コメント

  1. okkun より:

    宅内配線が傷んだ状態で停電から通電復帰すると、そのタイミングで火事の原因になることがあります。いわば「時間差被災」がおきるわけです。なので特に留守の場合はブレーカーは切っておいたほうが無難です。また最近の現代人は電気暖房に慣れてしまって、「換気する」ということを忘れてしまいがちです。どうぞ気をつけて。こんなときでも日本人の律儀さは驚嘆すべきものがあり、私は「阪神」の当日、周囲がメチャクチャなのに避難所で「燃えるごみ」と「燃えないごみ」を人々が分けているのを見て感じ入ってしまいました。

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