桃の節句: 春季特別展「大庄屋中西家名品展」(その6)

3月3日は桃の節句、私の実家でも(妹が早くお嫁に行けるようにと、)母がお雛様を並べたそうです。

さて、中西家名品展にも桃の節句にちなんだ絵画が出陳されますので紹介します(出陳時期はだいぶずれますが)。

画像月岡雪鼎筆「鶏に唐子図」

大きな雄鶏(おんどり)を抱えた唐子が描かれています。これだけでは画題かの特定はむずかしいのですが、
背後の樹木がヒントとなりました。枝は垂直に向かっていて一見すると梅のようです。ただ、花を見ると淡~いピンク色で桜花のようでもあり、五弁なのは梅花のようにも見えます。また、花がまばらで、枝の先端に葉がチョンチョンとあるのを見ても、通例描かれる梅とも桜とも異なります。
調べると、どうやらこの樹木は桃だろうとわかりました。
桃、雄鶏、唐子(子ども)、この3つの取り合わせから、いろいろ探していると、「東童五節遊(あずまわらわごせつあそび)」という浮世絵に、子ども達が集まって闘鶏(鶏合わせ)に興じる図がありました。節句を描くこの絵に描かれるのは、本図と似た花弁、葉を持つ桃の木です。
闘鶏(鶏合わせ)ははやく『日本書紀』に登場し、占いなどに用いられますが、平安時代になると、宮中や貴族達の間で流行し、以降、3月3日に行われる恒例の年中行事となりました。「年中行事絵巻」や上杉本「洛中洛外図」などにも闘鶏に興じる人々の姿が描かれます。
江戸時代には、闘鶏用に雄鶏を改良した軍鶏(シャモ)も導入されて、庶民の間でも大きな娯楽になったといいます。

鶏を抱く子が単独で描かれる例はあまり見ませんが、本図は桃の節句に行われる闘鶏の一場面を描き出した作品といえるでしょう。
闘鶏の暴れ鶏を抑えられるような元気な子に育ってほしいという願いを込めて、桃の節句の時期に掛けられたのではないでしょうか。

ちなみに、この絵を描いた月岡雪鼎(1726~86年)は京都、大坂で活躍した絵師で、肉筆浮世絵(特に美人図)を得意としました。
(terra)

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