高山に来るのはずいぶん久しぶりだった。いつも行く一ノ町の郷土博物館に行ったら、隣に大きな「飛騨高山まちの博物館」ができて移っていた。江戸時代の豪商の土蔵を活用して昨年4月11日開館したものだ。
展示は金森家、旧家の遺品である絵画、書、工芸品、古文献など歴史民俗系の品をガラスケースにおさめた旧来の手法なのに、たくさんの人がいるので驚いた。館長のNさん私が飛騨世界生活センターに行っていた時の仲間だったので、呼び出して話を聞いた。
――入館者がずいぶん多いですね?
年間20万です。郷土館の頃は約1万5000人でした。200円だった入館料を、おもいきって無料にしたのがよかったのでしょうね。この博物館を「まちの庭」と位置づけることにしました。年中無休、開館を早め、トイレや庭園もオープン。市民だけでなく観光客も気軽に利用できるようにしました。
――博物館活動は?
郷土の歴史を学ぶ、伝統文化を継承する、気軽に自由に過ごす、そこから新たな発見がうまれる、これが私たちのキャッチフレーズです。
大型の研修室は地域振興、伝統継承、教育振興のプロジェクトに貸し出して活用してもらっています。資料閲覧室はもっと充実させたいものです。
――ボランティアは?
これは最も大切だと考えています。今、館内では民話の紙芝居や古文書講座や木工教室をやっていますが、日本酒の試飲会もやる予定です。酒なしに高山は考えられませんからねー。そして、まち歩き。まちとの連携を強めることが大切でしょう。そんな場所が博物館だけでなくまち中に広がっていくといいな、と思っています。
この博物館には発想の切り替えがある。経営体としての目的と効果が考えなおされていることで、入館料を無料にしたことにあらわれている。一人200円で1.5万人なら年に600万円。しかし、全体の運営費に占める比率は小さなものだ。具体的にはボランテイアの登用や、ポスタ-、チラシ、報告書などを電子メディアにかえるなど、旧来の博物館にあった冗費を抑えることはそう難しくはないだろう。それよりも入館者を10倍以上に押し上げることで、まちに活気がでる。観光のまち高山という特殊事情はあるが、これも博物館の新しいあり方だろう。
(キューカンチョー)
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