千里ニュータウン展の展示とその主張 その1 自然展示
展示計画の調整が遅れていましたが、議論も大詰めを迎え、モノ集めのメドもたって、ようやく全体像がみえてきました。会場は、特別展示場のほかに常設展示場の一部(主として近世の部分)を使うことになります。ここでは、展示を大きくセクションに分けながら、その構成と何を主張したいかを紹介しましょう。
千里ニュータウンのインパクト
自然を豊かに残していた里山を約1200haの更地にかえて、千里ニュータウンがつくられて以来、40年をこえる歳月が経ちました。展示のねらいは、ニュータウンは自然肝要にどんなインパクトを与え、そのあとどう変わっていったのかを表すことです。
現代の都市は、成長に反比例して自然が壊されています。しかし、千里NTは植物の確保に成功し、緑の町と呼ばれるようになりました。里山、竹藪、田畑、池、小川、低い家の並ぶ集落というかつての景観は、高層を中心にしたものに変わりましたが、(人工的であるとはいえ)公園には芝生や木立が、道路には街路樹、住宅地には庭木や鉢植え、そしてむかしの林や田畑すらわずかながらも残しているのです。
もっと視点を高めると、背後には、まだ自然植生を保つ北摂の山地があり、周辺の市町村では平坦地の宅地化がすすむ一方で、万博跡の公園では更地から森を育成するなど、環境は刻々とダイナミックに変わってきました。その結果は、さまざまの植生が住宅の海のなかに浮かぶ島々のようになって、今日の日本列島全体に共通する、あたらしい生態系ができつつあることがわかります。
市民活動の成果を
都市を放置していると、これまでの経験から見て、植物の少ない「砂漠」になってしまいます。吹田市や豊中市では、目先の利益を追わず、自然と共生しよう、守ろう、そして楽しもう、と人々は自然観察会や守る会、樹木や植生の記録、竹林の保存などについて勉強会やその成果の出版をおこないながら活発な活動を展開しています。
今回の展示は、3メートルほどのガラスケースに集約することになるでしょう。そのため写真を中心に、自然環境の時間変化や特徴あるニッチの説明などを紹介することになるでしょう。
なお、博物館の裏庭にカンサイタンポポとセイヨウタンポポのプランターをおき、ほかにもヒメボタル、メダカ、クワイなどの実物を置くことを計画しています。
また、自然研究グループの発表会や、ニュータウンを実際に歩いて歴史と自然を観察する「散策会」が土・日・祝日を中心におこないます(これらについての日程や詳しい内容はまもなく発表されることになっています)。この小さな展示と観察会が将来、もっと大がかりな展示会になることを期待しています。
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