家具っていうかんじやったわ。 【開幕まであと56日】

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「あんた、使うとった人の話しが聞きたいやろ。 最初に千里ニュータウンに来た人らで『バスオール』を使うとった人に集まってもろたるさかいな。 そらオモロイ話が山ほどあるで~。 覗きにおうたとか。 一期で入ってる女の人は、もうええ年やけどキレイやで、みんな。」

市民委員会を束ねる会長が、『バスオール』だけの縁でやってきて、千里ニュータウンを知らないわたしに、助け舟を出してくれた。 会長は優しくて恰幅のいい堂々とした男性。 「ほな兄さん、指一本つめてもらいまひょか。」と包丁を渡しても似合いそうな迫力の持ち主で、委員会のあーだ、こーだをしっかり仕切る。

吹田市立博物館:会議室に集まってくださったのは、会長の言葉どおりキレイに年を重ねた三人の女性。 1962年9月15日に第一号として入居したと覚えていて、入居知らせの古いハガキまで持参してくださった。 20代で子どもはまだ1歳だったとのことだから、60歳代後半のはずだけど、三人が並ぶと会議室がパッと華やかになった。 話しにメリハリがあり目が生き生き、とにかく若々しくて華やか。 同世代の男性は負けてるよな…【^^;】

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大阪市近辺の町から、10年後には夢の街になるという千里ニュータウンに憧れて、高い抽選倍率にめげずに応募してやってきた。 まだ電車も道路もなく、ぬかるみだらけの道は長靴をはいて遠くの駅まで歩き、駅で革靴に履き替えた。 街の開発が進行するなかで聞いた、近くの山を崩すハッパの轟音を今も覚えているとか。

どこの家でも、夫は夜11時をすぎないと帰宅しない。 その時間だと銭湯が閉まっていた。 一日働いて疲れて帰る夫、まずはお風呂に入ってもらいたい。 そして、乳飲み子や歩き始めたばかりの子どもを抱えた若い妻は、銭湯でベビーベッドの空きを見つけるのが大変だった。 「みんな同じ年ぐらいの子どもがいるでしょ。 3時になったら早く銭湯に行かんと、もうベッドがないんよ。 いま振返ったら、若かったからできたんやね~。」

夫には相談せずに、さっさと『バスオール』を買った。 「高かったけど欲しかった。 あれはよう出来てましたわ。 パアーと水をかけたら汚れがとれて、カビないんよ。 家具っていうかんじやったわ。」便利だったと口を揃える証のように、改良型が出ると買い換えて使い続けた人が多かったそう。

トイレットペーパー騒動の話を聞くと、「とにかく配水管を詰まらせたら、皆に迷惑かけると思うて。」という答え。 今も住んでいるという団地は、なんと40年配管の詰まりを起こしたことがないそう。 話の端々に高度成長期と呼ばれた時代の勢いと、忘れられた日本の女性の香りがした。 他人に迷惑をかけずに自立した暮らしを営む。 ご主人を立てつつ、財布の紐を握って台所を預かり、しっかりと働いてもらう。 そういえば、今年のNHK大河ドラマは『功名が辻』山之内一豊の妻、だったっけ・・・

(おかきた’まり)

 

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