シンポジウム 千里ニュータウンの計画と現在、未来への再設計

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5月21日 講座室で
・コーディネータ 宗田 好史 京都府立大学助教授
・パネリスト 大久保昌一 大阪大学名誉教授
藤本 佳子 千里金蘭大学教授
藤本 英子 京都市立芸術大学助教授
鈴木 毅 大阪大学助教授

千里ニュータウン・吹田市・豊中市でまちづくりに関わっておられ、市民の身近におられる先生方をお招きして開催されました。
1時間30分の予定が2時間15分に及ぶ活発な意見が交換されました。要約するのは困難ですが、主な内容を紹介します。

前半は千里ニュータウンの計画と現在について、現状と課題などが議論されました。
各先生方が強調されたことを紹介します。

鈴木 毅:千里にも歴史がある。豊中市域では旧上新田村の歴史があった。千里ニュータウンは大阪府が誇りを持って凄いエネルギーをつぎ込んで創った。その歴史をアーカイブとして残しているのも日本では貴重だ。また入居してから40年間、市民が地域活動などソフト面で新しいまちの歴史を作ってきた。このことを記録に残していきたい。
藤本英子:現状ある風景の素晴らしさをもっと感じて大切にしてほしい。特に法面のみどり、公園・道路、建物とのみどりの調和、人が活動する風景を。
藤本佳子:千里ニュータウンは素晴らしいブランド。住環境の質が高く恵まれている。戸建て住宅の細分化、団地再生等の課題であるが、建替えができるラッキーな状況にある。
宗田好史:ニュータウンの老朽化・商業施設の衰退、周辺地域開発による緑の減少がある。大阪市内都市部の環境が回復し、都心回帰が進んできた。NTの優位性がなくなり、見捨てられまちになる要素も持っている。
大久保昌一:香里団地から始まり、半生をニュータウン開発に関わってきた。ヨーロッパでは風景の中にまちを作って来た。私のやったことは全て自然破壊。自然破壊者として地獄に落ちた夢を見た。現在は開発をする時ではない。都市の生態を考え、自然を再生する時である。

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後半では、千里ニュータウン未来と市民に期待することを討論していただきました。
大久保先生から、
・「英国近代都市計画法」の理念
~健全な家庭、美しい、住宅、楽しい町、品格ある都市、爽やかな郊外~、
・英国ニュータウン開発の根拠となった「ニュータウン法」の目的
~以前のスラムの友好精神と新都市の改善された衛生状態を組み合わせること~
~美と文化と市民的誇りを身に付けた健康で自尊心と品格ある新しいタイプの
市民を生み出す~
を紹介され、まちづくりに哲学をもって当たってほしいことを強調されました。
聴講されていた阪口吹田市長からご挨拶があり、「ニュータウン再生室中心に、保全するもの、改善するもの、創造ものに分けて取組み、千里を世界のブランドにしたい」との発言がありました。

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各先生方からの提言を要約して紹介します。

(1)「築年数だけ老朽化した-建替え」でなく、いろいろなリモデルを検討してほしい。画一的でない多様な再生プランを。
(2)「安全・安心のまち」が大切。コミニティの良さ、顔のわかるまちが良い。それを発展させていただきたい。子供が育つには、自然環境より年齢を越えて人が触れ合うなどの社会的環境が重要。
(3)市民には理想がある。企業は経済合理性で進める。行政は地域に相応しくない巨大なカンバンを留められなかったが、市民が止めた。企業の社会的責任が問われる時代、市民は声を出して要求しよう。府は法律なしでニュータウンを作った。地域が法律をつくるつもりで市民が行動を。
(4)ニューヨークではどこで何が起こっているか。第3者機関が情報を発信している。専門性の高いNPOを育てること。豊中市・吹田市・専門性の高いNPOが連携した再生機構を。
(5)仙台市郊外には東北大学医学部と協働で「日本一の長寿村づくり」に成功した田尻町がある。ニュータウンもそれに学べ。
高齢者は社会発展のエネルギー。高齢化社会は楽しいといわれるまちづくりを。
まちはみんなで育てるもの、そしてそれを繋げてほしい。
(6)住宅再生法をつくり、公的住宅には国費投入も必要。声をあげてほしい。

最後は、国際記念物遺産会議理事も務められた宗田先生の提案。ニュータウンのモデル・レッチワースの美しい写真とイギリスの誇る19世紀初期に作られたユネスコ世界遺産の近代集合住宅のまち・ニューラナークとサルテアの写真を示し、「将来千里ニュータウンが世界遺産になり、世界の人が訪れたくなるまち、住みたくなるまちになる夢を共有できるよう、まちづくりをしていきましょう。」と締めくくられました。

(by ようちゃん・おーちゃん・しょーちゃん)

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