画廊「五風舎」:正倉院展もいいが・・・。

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正倉院展の時期、奈良に足を向けるのにはひとつのワケがある。正倉院展もいいが、大仏殿の裏ともいうべきか、依水園から戒壇院に向かう途中の路地にある画廊、「五風舎」をのぞきたいからである。
毎年、この時期に合わせ、陶器・漆器・竹工・織り・吹きガラスなど、奈良在住の作家による工芸展を開いている。毎年進化している工芸展をみるのも楽しみだが、もっぱら画廊の主・山本夫妻に会うことが目的である。

12年前、店主から「先祖代々残してくれたこの日本家屋を、何に活用したらいいと思うか」と相談され、「画廊として一般に開放したら」と無責任にアドバイス。展示できるようなしつらえをし、オープニング展を仕込んだのも私だ。「音が聞こえる展覧会・JAZZ絵画展」などという、和風スペースにはおよそ似つかわしくない展覧会、会期中に鹿が来る中庭でジャズライブなどもやってしまった。ミスマッチはときとして成功例をもたらすことがある。
しっとりとしたたたずまい、庭を愛でながらお茶を一服いただくと、「うーむ、生きていてよかった」となる。こんな空間はいつまでも残しておいてほしい。

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画廊の隣は、今は亡き写真家・入江泰吉の家。仏像の写真や撮影機材もろとも奈良県に寄贈したというが、放置されたまま。なんとかしなくてはいけない。
画廊を背にして戒壇院に向かい、一筋目を左約150m、「しろあむ」という喫茶店がある。
こだわりのコーヒーは「ミリカ」並みだが、ここは「万華鏡」の城。カウンターに7人で満席、残りのスペースは万華鏡でいっぱい。池さんというママは昔スッチーとか。コレクションはすさまじく世界中の作品が揃い、行く度に万華鏡が増殖している。この店も、私にとっては奈良道中欠かせぬポイントになっている。

いつもながら喧騒の正倉院展、しかしその近く数百メートルにある、小さな空間には静けさとやさしさがあふれていた。

(by あかちゃん)

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