エミリー・ウングワレー展~アボリジニが生んだ天才画家~(その4)

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この展覧会には政府が積極的に関与している。それはよくあることだが、個人展、とくにアボリジニにのものは初めてではないかと思う。なぜなのだろう。

まず、これはオーストラリアの新イメージとして使えるぞーという政府の下ごころがあるんではないか。ファイン・アートとして国際的な評価をえているし、「白人とアボリジニの2文化の融合」という多民族国家の形が表現されている。ついでにいえば、資源国家オーストラリアの経済が最近好調で、いやに元気。

植民地として始まったオーストラリアは、文化的に本国の亜流であることから逃れられなかった。そうでないことを示すには、独自のアイデンティティが必要で、その模索が続けられていた。アボリジニ美術が注目されたのはここ30年のこと。展覧会の賞を独占、公共建築の装飾にしばしばつかわれる等々。Tシャツやアクセサリーなどの日常世界にまで進出してい。初めのころは、目立つのだがダサイという感じだったが、今はふつうとか、けっこうシャレてるというところまで来ている。

アボリジニはオーストラリアの大地を歌に唄い、絵に描き、祈りを捧げてきた。生まれ落ち、育ち、再びそこへ帰って行くふるさとを愛するのは、どんな人間も同じであろう。あたらしい国家オーストラリアはそこにアイデンティティをつけたのだろう。その一つが、エミリーの絵画なのかもしれない。

(カンチョー)

コメント

  1. akakage より:

    アボリジニアートについてはよくわかりませんが、なるほどオーストリアの土や風(アイデンティティ?)を感じます。エミリー・ウングワレー展は国立新美術館でもおこなわれるのですね。東京で見ようかと思いましたが、時間が合わず、残念です。

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