4月13日のブログ(「日本史を動かしたタケ-弓について考えたこと」)で、カンチョーが「竹が移入された植物で、奈良時代には、貴族階級にしか知られていない高貴な植物だった」と書いています。そこで、奈良時代に成立した『万葉集』には、竹や笹が出てくるのか、あるとすれば、どのように歌に詠まれているのかを、調べてみました(*1)。
まず、「竹」がでてくるのは、21首。このうち半数(11)が枕詞として出てきます。
もっとも多かったのが「さす竹」の8首。「大宮」「大宮人」「皇子」「舎人」などにかかる枕詞。勢いよく生長することから長寿繁栄を願うほめことばとしてつかわれたそうです(*2)。なるほど高貴なイメージ。
つぎに「なよ竹の、なゆ竹の」が2首。竹のしなやかさから。かかる言葉は「とをよる」(=たおやか)。で、その先が、「子」とか「皇子」とつづきます・・・あら、やっぱり高貴なイメージがでてきますね。
1つしか出ないのですが「さき竹の」(=割りさいた竹)は「背向(そが)ひ」(=背中合わせ)にかかります。「吾背子をいづく行かめとさき竹の背向に宿(ね)しく今し悔しも」(*3)。ああ、人は千年ぐらいじゃ進歩しないのだなー。
植物の竹そのものを詠っているのが10首ありますが、そのうち植わっている竹が5首、竹製品が5首で、半々でした。
竹製品は、なんと4首までが「竹玉・竹珠(たかたま)」。これは神事に用いられたらしく、歌をみると齋部・齋瓮(いはひべ)という神にそなえる酒をいれるものにかざりつけられたようです。やはり高貴というべきでしょうか、清新なイメージです。あと1首は「竹垣」でした。
植わっているタケは、「竹の林」が2首、あとは「群竹」「植竹」「竹葉」。
おもしろかったのは「竹の林」で鶯が鳴いていること。(一方の歌は「梅の花散らまく惜しみ」ではじまり、散ってしまってはいるものの、いちおう梅もでてくるのですが、)竹に雀、がまだ定着していないのですね(そもそも万葉に「雀」が出てきません)。
竹は、上記21首以外に、詞書き部分に「(漁夫の)竹竿」と「竹取の翁」が出てきます。「竹取の翁」は、『竹取物語』に先立って出てくる最初の用例なのだそうですが、それはさておき、この2ヶ所の「竹」は人が利用する竹です。
「しの(篠、小竹)」という言葉も竹に関連する言葉です。細い小さい竹の総称、メダケ・ヤダケなどをさします。これが8首あります。刈るとか、矢につくるとか、おしなべ、など、人の利用をおもわせる語句と結びつくものが4首、竹よりも身近な存在である感じがします。他は、風景である「しの原」が2首、枝先で鳥が鳴いているのが2首あります(うち1首はやはり鶯なのだ!)。
一方、「笹」は5ヶ所で、すべて植物の笹を詠っています。笹の葉が風でさやいだり、露や霜がおりたり、雪が降り積もったり・・・身近な自然の風景が目に浮かぶ歌です。
*1 中西進編『万葉集事典』(講談社文庫)1985
*2 大野晋ほか編『岩波古語辞典』(岩波書店)1974
*3 佐々木信綱編『万葉集 上巻』(岩波文庫)1927
(こぼら)
コメント
大修館書店・漢語林/カシオの100辞書<電子辞書>・・困難使えん。 お魚偏は、食べて納得。 竹編は、 竹・笠/ちく/竺<これを書きたかった>・笛<Atoke出異変・・竿で出てくる/竿をふえで・う>・ しんどいは・・・。
・・・・ひひ・・品格・・・