日食の日のイベントに500人近い人が博物館に集まったので驚きました。予報がかんばしくなかったので、2階の講座室にテレビを据え、実況放送をみながら、いろいろなお話をする用意もしてありましたが、雲間から時に太陽が現れる程度の天気だったので、みんな外に出て、11:05、食が最大になったときは、最高の雰囲気になりました。
日食は太陽が急に隠れてあたりが暗くなる。しかも、それは何年、何十年に一回しか起こらないことなので、むかしの人は、神や悪魔が起こす超自然的現象だと考えたらしいことは、世界の民族の神話や民話が示しています。それでも人々は、日食には太陽と月が関わっていることを知っていたようです。そこで、太陽を女性、月を男性とか、二つを操る悪魔と善神やその飼い犬などと、擬人化して物語を語りました。そうすることで異常な現象を説明し、もっと大切なことは、その記憶を語り継いできたことです。
一つ気になるのは、日食に吉か凶という判断を入れることで、そこには(宗教もふくめた)権力の悪意を感じます。理解できない現象に対してやみくもに不安や恐れを抱かせ、正確な判断をうしなわせてしまうからです。さいわい、現代のこどもたちは、日食が月と太陽の動きによって起こること、それを衛星写真でみるなど、科学的に正確に理解しています。そして、童話やおとぎ話をおかしいなーと思いながらも、楽しんでいることは、かつては子どもだった大人も記憶していることです。科学するこころの大切さを感じます。占いや、予言、地球終末論などに対しても、楽しむのはいいですが、科学のこころをわすれないでほしいと思います。
それにしても、日本の神話はヤケに明るいですね。アマテラスが弟のスサノオの乱暴狼藉に怒って、天の岩戸のなかに隠れた。この世は真っ暗になった。困った人々は一計を案じ、岩戸の前で盛んに火を焚き、アマノウズメが舞台に立ってストリップティーズをやらかし、大さわぎ。不思議に思った大神がそっと扉を開けてのぞくと、横で待っていたタジカラオが、がらがらこじ開けて、めでたしめでたし。
博物館の広場にあつまってみんなが空を見上げ、三日月のような太陽が雲間から見えたとき、オーと鬨の声に似た歓声が上がり、終わるとみんな楽しそうにかえっていきました。そんな様子を見ていると、自然の力の偉大さと、人間というのは今も昔もかわらないものだと思いました。日食が何時間も続くんじゃなくて良かったです。
(カンチョー)
コメント
吉見百穴の展示で昭和34年につくられた三船敏郎の『日本誕生』(東宝/180分)をみました。うう~ん、天の岩戸のシーンは延々15分。すごかったです。