終戦記念日の15日、正午に黙とうしている甲子園を見てから博物館へ。
1時半から関西大学教授の吉田宗弘先生の講演「都市の生き物-想像を超えるしたたかさ-」と「吹田ヒメボタルの現状と調査活動」報告を聞きに行きました。
吉田宗弘先生の専門は食品栄養学、なかでも微量ミネラルの栄養学の専門家。
だのに、チョウに関してもプロ以上の研究家で論文も数多くあります。
約十年前に北海道に急に現れ、定着したオオモンシロチョウという蝶の説明からお話は始まりました。
外観はほぼモンシロチョウなのだが幼虫や卵の形はまったく異なる蝶。
欧州では普通に存在し、作物に被害を及ぼす害虫です。作物に付着して北海道に来たのだろう。北海道にはこのオオモンシロチョウの天敵になる蜂がいたので、それ以上は増えなかった。
昆虫は離れた場所に連れて行かれても幼虫時代の食べ物があり、冬を過すことができれば育つ生物だ。
昆虫は植物に依存している。都会の植生を考えると、
(1)都市化以前から存在する植物:残存植物。都市化前にあった神社とその杜の多くは残された。
(2)わずかに露出した土に生える侵入植物。
(3)花壇や生垣のように意図的に植栽される造成植物がある。
都市で昆虫が生きていくためには、都市の明かるく、保水力のない土壌環境に適応でき、かつ都市の植生を利用できることで、草苅りや剪定などの頻繁にに起こる撹乱にも耐えられることが必要だ。
吉田先生は少なくとも月に二回、4月から10月の間に
京都から枚方・守口そして神戸にかけての7か所をルートセンサス法(※文末)で蝶の観察をしていらっしゃいます。
7か所とは
神戸・猪名川町・守口市大和田・枚方市長尾台・枚方市牧野・京都の桂・桂川河川敷です。
守口で見かけた蝶は8種195個体で9割はモンシロチョウ、ヤマトシジミ、アゲハ、アオスジアゲハ、ツマグロヒョウモンの5種類だった。
桂川河川敷では30種580個体でトップの5種は守口と似てる。
しかし神戸の里山では47種634個体を見た。
猪名川町では54種1569個体を見た。
里山では多様な種が生息している。
グラフの「その他」の割合が半分近くになっている。
一化性:年に一回発生するチョウ=卵ないしサナギ状態で長時間を過さなければならない。
農村や里山に住むチョウの多くは一年に一回しか発生しない。
都会に住む多くのチョウは年に2回以上発生する種類だ。
一化性のチョウは草刈りなどの撹乱があるところでは育つことができない。
一方ヤマトシジミは年に6回、モンシロチョウは5回は発生している。
ツマグロヒョウモンでも3回は世代交代している。頻繁な撹乱に耐えることができる。
アオスジアゲハは都市ではクスノキで育つ。クスノキは神社やお寺に多いので育つのだ。サナギは低温に強いので東北地方でも見られる。
ヤマトシジミはカタバミがあればやってくる。幼虫でも越冬するが全部が越冬できていないので春先には少なく、秋になると爆発的に増えてくる。
ツマグロヒョウモンはスミレ、パンジーの葉を食べて育つ。
モンシロチョウは都市のチョウというより基本的には農村のチョウ。明るい環境を好み、アブラナ科植物を食べる。
アゲハがなぜ都市に多いのか?柑橘類が都市に多いからだろう。日本人が柑橘類が好きで庭に植えていることが多いからだと思われる。
ナガサキアゲハはサナギで越冬するので今後増えてくると思われる。
南方系のチョウが都会では増えてきている。クマゼミも増えたといわれる。しかしいつから増えたか、どうして増えたか、なぜ都市に多く山地に少ないのか、科学的にはどれも確かなことはいえない。大切なことは観察すること。そして記録することだ。どんな些細なことでも記録に残してください。
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吹田ヒメボタルの会・塩田さんが「吹田ヒメボタルの現状と調査活動」を報告しました。
過去12年に及ぶ膨大な資料が圧巻でした。
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最後に恒例のカンチョー乱入トークショー
(おーぼら)
※ルートセンサス法
あらかじめ設定しておいたルート上を歩いて,一定の範囲内に出現する目的の動植物を識別し,種別個体数を計数する方法。
コメント
今日は、あつい家をぬけだして、冷房の効いた博物館の講座室でお昼寝できて気持ちよかったです(吉田先生、ごめんなさい)。でも講座の内容がブログでこんなに詳しく説明されているから、聞いてなくても大丈夫(笑)。夢うつつでよくわかっていなかったところがすっきり理解できました。おーぼら様、ありがとう
おーぼら氏の「詳細筆記→即刻ブログアップ技能」は、このブログを支える偉大なる要素と言えるでしょう。こないだなんか寝ながらノートとっていたようです。まったく驚嘆に値します。まるで大学のクラスで、きっちりノートとってる女の子と仲良くなれちゃったようなオトク気分と安心感が…。カンチョー乱入部分も文字化できると、古代文字でも読めるんじゃないかとおもいます。
おホメなのかオダテなのかわからないokkunのおコトバ、ありがとうございます。
うーん…カンチョー乱入の文字化…ねぇー。
聞いてるときは、「ふーん、そーなのかな?」と聞こえるのだけど、いざ他人に「カンチョーは○▽×※って言ってたよ」と伝えようとすると○▽×※の部分が文字化or言語化できないのです。
まさに古代文字‘言葉のヒエログリフ’なのですね。
もし、文字化できるようになったらハンドルネームはシャンポリオンとしよーかな。
博物館で起きたことの記録に関して、「おーぼら」「こぼら」「写真のきょうちゃん」は夏の大三角形と言えるでしょう。「てつ」はハレー彗星ですかね?
その頭脳を持ってしても再現できない乱入部分は「あやかしのカンチョー」ですね。もし現代文明や人類が滅んで数千年後、ブログを発掘した知的生物がいたら、すべての記録が「カンチョー乱入」の一言(詳細記述なし)で終わるので「カンチョー乱入」は最大の謎として残るでしょう…。