「吹田市の自然物語」09年7月26日(日)シンポジウム「森の木と街の木」

13時30分より小田信子・すいた市民環境会議理事の司会で行われた。主催者の小山修三・博物館館長、笠岡英次・知床の森トラスト関西世話人、小田忠文・すいた市民環境会議会長の3人が挨拶を行った。

吹田市の街に植えた大木
 話題提供として、「吹田の大木調査から見えたこと」を調査責任者の平軍二・すいた市民環境会議理事が調査概要についてパワーポイントで報告した。
 ここで大木への期待を、①身近に大木があると、安らぎが実感できる。②大木を中心に身近な自然環境を守る思いが市民に広がる。③「木を植えることの効果・必要性」を市民がいだく。④地球温暖化防止対策のシンボルとして重要であるとまとめた。
 調査をはじめて行った1997年と2007年の調査方法の違いと10年後、大木の変化した状況を説明した。
 「97年調査時の大木が伐られた大木」「07年調査後伐られた大木」「周りに気遣ってようやく生きている木」「民家で大事にされている木」の事例を各々あげ、鎮守の森垂水神社の大木を示して、報告を終えた。

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ナショナルトラスト運動から原生林の再生へ
続いて、「知床100㎡運動の現状」と題し、関根郁雄・(財)知床財団理事長が運動の取り組みから現在の課題についてパワーポイントで報告した。
 知床への入植の歴史から国立公園内に残された離農跡地が1970年代土地投資ブームで開発の危機に曝され、100㎡運動のはじまりと全国的な参加者の拡大を振り返り、国有林伐採への反対運動と林野庁の方針転換をあげた。さらに英国のナショナルトラスト運動本部からの視察、訪問、アジア・オセアニア地域におけるナショナルトラストシンポジウムの開催へと世界へ拡がりから世界遺産に登録された経過を関わった人々を紹介して述べた。
94.8%の保全率となり、最終目標を達成し、数百年先の未来の森を目指して知床の原生林回復への挑戦を行っていると説明した。
現在取り組んでいる「多様な樹種の入り混じった森へ」「エゾシカ対策」「生物相の復元」「モリタニング調査」「人と森の交流」について語った。

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シンポジウムはコーディネーター喜田久美子・すいた市民環境会議理事のもと行われた。
大木へのあこがれ、地域のシンボル
パネリスト武田義明・神戸大学教授は、人の寿命を超えた大木は都市部ではヒートアイランドを緩和するとともに住民にやすらぎと人と人とのつながりをみせており、町の形成、地域のシンボルとなると語った。

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“なにもしない”ことの勇気と垂水神社
出原真哉垂水神社禰宜は、鎮守の森は自然保護の対象ではなく氏子が守っている信仰する山であると述べた。これを維持するには資金が必要であるが一度伐った木は戻らない。現在、“なにもしない”ことは非常に勇気がいることであるが、代々引き継ぎいでいきたいと決意を示した。
一本の大木を育てるため、人知を結集する知床の挑戦
関根郁雄さんは先の話題提供の補足説明として、人が手をかける原生林の再生に取り組む知床ルールを説明した。ここでエゾシカによる被害から守る対策から一本の大木を育て、守るための人と時間、家一軒分の費用をかけた取り組みを語った。動物の個体調整を行っている世界遺産の場所はないが、検討項目として委員会へエゾシカ調整問題について検証作業、報告を行っている。また多様な樹種の安定した森へ生態学他専門の先生方での検証作業を行っていると述べた。
“万博の森”から“吹田の森”を
 小田忠文・すいた市民環境会議会長は、吹田の大木・古木調査の目的を“木への親しみ、環境への親しみ”
をもって、吹田の町あるきを意図したと語り、40年を経て「万博の森」となっている例を引き、“吹田の森”を提示した。
緑の町へ住民意識の転換を
武田教授は住民が緑ある町で木のうるおいを享受している意識を育てていく必要を語った。
小山館長から、オーストラリアでは焼き畑が行われ、木へのこだわりがなく、原生林は人間が住むには不都合であり、自然淘汰による森が望ましいのではないかと述べた。これに、武田教授はオーストラリアの例は
火によって種が分散、繁殖する進化過程の違いであると指摘し、町では木の状態をみて、50~100年の計画のなかで手をかけ続ける必要があると語った。生物多様性の国家戦略のもと、市町村での基本計画の策定、管理と住民の意識の関係をあげた。
人、金、時間のかかる運動から日本の森を守る運動へ
 関根さんは、知床再生の森では“外から持ち込まない、外へ出さない”とのルールを定めて運動を行っているが、運動には人、金、時間がかかるが、自治体では国からの補助金など減額され困窮状況にある中で、日本の森を守る運動への発展を目指していると語った。

小田さんは行政と市民の「協働」による生物多様性のガイドライン作成の必要性を述べた。
小山館長は吹田が北摂の山と緑とつながっていない現状を指摘した。

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天神崎保全市民運動の次世代への継承と
質疑では、鎮守の森の保護にあたり宗教と行政の分離との関係について質問がでた。神社は氏子の総意によると出原真哉垂水神社禰宜が答えた。
参加していた天神崎保全市民運動の玉井さんに司会から意見を求めた。玉井さんは35年かけて目標率40%であるが、この運動が次の世代へ継承していくためには終わらない方がよいと語った。また熊野の森では林野庁との闘いを続けていると述べた。
意見交換をする中で、予定の16時30分に終了した。
(7月28日 作成M)

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