「吹田市の自然物語」09年8月1日(土)吹田市の自然保全の取組み

○紙芝居―「ヒメボタルはいまどうしているのかな」:西山田ヒメボタルの会

○講演―自然の現況と保全・保護のあり方:武田義明氏(神戸大学教授)

○報告―千里第2緑地での里山管理:前川光宏氏(すいた環境学習協会)

緑地回復を求める市民のメッセージ

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○紙芝居  ヒメボタルの光を見守り続け
西山田の住民が12年にわたって保全に取り組んでいるヒメボタルの誕生から生育し、成虫になっていく様子を「西山田ヒメボタルの会」の2人が紙芝居で物語った。途中から見に来た幼いこども7人を含め大人は20人ほどが15分の紙芝居を見た。
「陸生のヒメボタルがこれからもストロボのような光を放し続けるこの自然の風景を地区の小学生を含め見守り続けていきたい」と決意を述べた。

○講演  痛められた自然に対し、里山に人の手を
 13時30分より武田義明氏は「吹田市の自然の現状と保全・保護のあり方」と題して講演を行った。
 吹田市の緑地変遷を万博前1956年、開発のはじまる1968年、その後の1981年と1995年を地図の上で示した。緑地の減少から里山でのつながりから分断孤立化している現況の問題を述べた。さらに、樹林の常緑化、樹林の竹林化、外来種の侵入が進み、生物多様性が低下している問題点をあげた。
 次に、ニュータウン開発例に三田市フラワータウン、所沢との比較を「種数面積関」で示した。

千里丘陵は二地区に比べ、生物の確保が困難になっている実態を示した。「小面積化と微地形」では吹田の植物は好湿多年生草が欠落、種の維持のための個体数が減少、次世代への継承が困難な危機的な状態であり、昆虫が少なくなっていると指摘した。
 神戸市再度山(ふたたびさん)で1974~2004年の間、5年ごとに行った調査から出現種類の変化、草木数の変動を図で示し、吹田と比較して説明した。
 吹田の里山管理の現状
吹田の里山は放置され、孤立化により単純な林化にある。モウソウ竹林の第4緑地では他の種が入って来られない。千里緑地のコナラ林にモウソウ竹が侵入し、種の減少化、下層植生が少なくなっていたと「密度と出現種数」のデーターで説明した。モウソウ竹林の管理で出現種数の推移を2005~2009年間で調べたデーターを示した。伐採により陽が当たり、出現種が増えた。在来種でなく、外来種、園芸種であった。土の保全は一挙にできないので根気よく行う必要があると訴えた。

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種の多様性に向け、吹田市独自の拠点づくりを
人工林の創出では、密植のため“もやし林”になる問題をあげた。万博の森林を例に階層構造が発達しない植え方に注意を求めた。緑地の孤立化のため種の多様性がみられないと状態に対し、自然林に近い群落構造、種構造をもったコア植生の創出や緑地の回廊化が求められると提示した。
生物多様性の保全のために、①情報収集(現状把握・既報の資料) ②問題点の抽出 ③保全計画の策定 ④保全策の実施 ⑤モニタリング をあげた。
このサイクルの検証が重要であるとした。吹田市独自の情報集積とする拠点づくりが必要と説いた。
 生物多様性の危機に対応した保全が求められ、08年5月に基本法が成立した。生物多様性の維持・回復に向け、3つの目標とした①国土レベルでの生態系ネットワークの形成 ②世代を超えた持続可能な利用 ③社会、経済活動の中に市民生活を組み込んでいく と策定した「国家戦略」と国、地方公共団体、事業者、国民の責務が規定されており、理解が求められている。ところが身近なゴミ(廃棄物)問題と違って実感が乏しいのが現状である。都市自然保全の実施に向け、市民、専門家、行政、事業者の連携とする市レベルで向けた戦略策定が神戸市、明石市ではじまっていると述べ、予定した1時間で、終えた。

○報告  里山(竹林)管理・保全の活動から里山公園化へ

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 「すいた環境学習協会」の前川光宏氏は吹田市藤白台循環器病センター裏手にある面積2万㎡の千里第2緑地の整備・保全活動への取り組み経過を報告した。吹田市の緑地率22.4%に対して、里山の価値の発見と小・中・高校の環境教育活動を基本にボランテイア活動を行っている会の概要を紹介した。
①アカマツ林 ②雑木林 ③竹林 の3ゾーンに分け、浸食していた竹を伐採、間伐し、下草を刈った。
整備は5年目に入り、各々のゾーンで復元をみている。ヤマザクラの回復やタラの芽の群生がみられ、スイタクワイを植え付け、メダカを放流し、散策路を設けた。体験学習会や自然観察会、間伐材の活用など行っている。美しい竹林と生き物の豊かな雑木林の里山公園化を目指していると抱負を述べた。

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 活動の課題に取り組む会員の高齢化、活動会員の固定化、新規会員の確保、助成金の確保・獲得をあげた。竹水を飲む会などの催しで会員同士が安全に、明るく、楽しく取り組みを行って、結果的に社会的な貢献ができていると語った。

この後、アベマキとクヌギの区別と植栽、トリが運び、持ってきた木、ヤマザクラについての質問があり、武田義明氏、平軍二氏が答えた。

 (8月3日作成M)

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