本のご紹介: 『古代アンデス 神殿から始まる文明』

画像大貫良夫・加藤泰建・関雄二(編)『古代アンデス 神殿から始まる文明』(朝日選書)2010年 1470円

1996年、梅棹忠夫先生が、カンチョーに連れられて初めて三内丸山遺跡を訪れた時、ご友人であった泉靖一先生の「アンデスの古い地層からはまず神殿ありきだった」という言葉をひいて、三内丸山の六本柱は神殿である、日本文明は三内丸山に始まる、と言われました(小山修三・岡田康博(編)『縄文鼎談 三内丸山の世界』山川出版社 1996)。青森の人たちは、その言葉にしびれ感激、三内丸山遺跡の保存活動にはずみがついたという伝説?が残っています。

その伝説の源となった泉先生というのは、今から約50年前(1958年)、調査チームを組織し、アンデスの古代文明の解明にのりだされた方。先生は、残念なことに1970年、まだ五〇代半ばにして急逝されたのですが、調査研究はその後、現在に至るまで引き継がれてきました。その調査の歴史と成果をまとめたものが本書です。
数多くの遺跡の発掘がすすんでも、泉先生の「はじめに神殿ありき」という大前提は揺らぐことはなく、まず神殿がつくられ、それがつくりかえられていった(神殿更新)ことが確認されているのだそうです。

ところで、カンチョーによると、吹田のあたりは古代、摂津国の一部で、難波宮に人や物を供給する場所だった、つまりその頃からニュータウンだった、とか。また、千里ニュータウンのマスタープランに宗教施設や墓地がなかったことはよく知られていることですよね。吹田には、古代も現代も残念ながら神殿はありませんでした。だけどなぜか、「まず博物館ありき」!
アンデスの神殿みたいに、人やモノ、お金をうまく回せるような装置になっていなくて苦労しているようですが・・・。行き詰まっているとしたら、古い博物館はていねいに封印して、「博物館更新」が必要なのかも。

(こぼら)

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