池由加(いけゆか):いちばん大きな甕

わたしが今まで見た、いちばん大きな縄文時代のカメは高さ84cmである。東博のガラス・ケースをはみだすようないきおいで中期の中央山岳部の土器製作技術の高さに驚いた。

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時代が移って弥生時代のものは、(ざっと調べたところ)九州の立岩遺跡のカメで高さ117cmもある。これは明らかに棺に特化したもので吉野ヶ里遺跡などでみるように、列をなして大量に出土するところが重要だろう。

古墳時代の須恵器は高温で焼き締められるので肩が張り、球に近いふくらみをもった容量の多い器になるが、これは露天焼きの土器ではできなかったものだ。

「延喜式」には畿内からおさめる陶器にはたくさんの種類が書かれているが、最も大きいものは「池由加」で5石と書いてある。由加とはカメの意なので、池のような大容量のカメだとわかる。奈良・平安時代の度量衡は大升(1大升=732ml)と小升(・・244ml)とあるので、5石の容量は366リットル。

すいはくの第2展示場の入り口に、須恵器のカメが並んでいるが、いちばん大きいのが半径45cm、これを球形とみなして概算すると容量は、「大升」でほぼ5石で、ピッタシ?

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しかし、このあいだ桜井市資料館で見たものはもっと大きく径1m近くあった。これなら、523リットル、約7石の液体がはいる。

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池由加は何に使われたのか、多分風呂や台所でつかう水を入れたのだろうことは、湯殿、釜殿という記録からうかがえる。ふつうの「由加」ならば酒、大豆、酢、しょう、みしょう、漬け物などが入れられていたことがわかる。しかしおもしろいことに、新来の須恵器は液体用として力を発揮したが、熱には弱いので、煮炊きには昔ながらの土器がつかわれていたのである。

(カンチョー)

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