講演会 「吹田市と津波」

7月24日(日曜)午後2時から関西大学社会安全学部教授、高橋 智幸さんが津波災害とその教訓を語ってくださいました。

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津波調査
東日本大震災の「震源地は岩手県と宮城県の県境の沖」となっています。これは「地震がはじまった場所」であって、長さ約450km、幅約200kmの範囲が最大20~30mの動いたことで生じた災害です。
災害直後から救助、救命活動がはじまり復旧、復興活動がはじまります。防災学の面からは災害直後の実態調査が必要なので、過去の阪神淡路大震災では全国の大学や研究機関が震災直後から現場に入り、救助の邪魔をしたりしてひんしゅくを買ったものでした。その反省から今回は津波合同調査グループとして全国の学者が調査をしています。情報はメーリングリストなどで交換して、抜け駆け調査はできないシステムをつくりました。発災後の3月12日から20日までは調査を自粛しました。21日から先遣隊が岩手・宮城に入って調査がはじまりました。

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各緯度に対応した津波の高さのグラフです。赤丸印は遡上高(標高何mまで海水が及んだかというもの)、青丸印は浸水高(海岸付近のビルに残った水面跡の高さ)を示します。
北緯39度以北の岩手県では遡上高が(最大40.5m)25m以上が多く見られます。そして赤丸印が優勢です。リアス式地形のため奥に進むほど水面が高くなったことを示します。
宮城県での津波の高さは赤丸、青丸印がほぼ同じ高さです。これは平野部の津波の特徴です。

ところが津波の高さが低かった(といっても5m以上ですが)北緯39度以南のほうが死者が多かったのです。それは平野部なので津波が海岸からどんどん奥まで入ってきたためです。

想定を超えた津波と想定された津波

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上の図の左上は宮城県三陸町志津川地区で以前に配布されたハザードマップです。このマップでは(津波は来ないという意味で)色がついてないの左上の×印にまで津波が来ました。まったく想定外の津波でした。

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上の図のように、釜石市の被災は想定通りでした。左端の×印に「これより先津波浸水想定区域」の看板があり実際その通り、その場所まで津波が来ました。まさに「想定通り」でした。
岩手、宮城のほとんどの地域が想定外の津波にやられたのになぜ釜石市で想定通りだったのか。それは次の写真にある超巨大防潮堤の効果だったのです。下の写真のように防潮堤はバラバラに破壊されました。しかし海面下の構造物が津波のエネルギーを吸収したと考えられます。

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想定外の防災機能

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仙台市若林区のバイパス道路の東側(写真の右側)は津波で壊滅していますが、西側はほとんど影響をうけていません。本来道路は防災目的では作られなかったのですが「土を盛った道路には津波に対して防潮堤の役割がある」と今回気づきました。同じように盛土の道路が堤防の役目を果たした事例は2004年インド洋津波がタイのプーケットを襲った時にも見られました。

津波防災のハードとソフト
津波防災の主役は「避難」です。しかし「津波が来たら避難する」という防災意識は時の経過とともに必ず薄らいでくるものです。高い防災意識が維持されていることを前提とした避難計画は危険です。避難を助けてくれるハードの整備はどうしても必要となってきます。つまりソフトとハードが連携した津波に強いまちづくりが必要です。
ハードを作るといっても今回のような1000年に一度の津波に対して防潮堤などを作るにあたって、建造物の寿命は約50年なので、1000年間には20回も立て直す必要があり、悩ましいところです。一方のソフトでは防災情報と防災教育が主役となり、津波警報システムの構築が急がれます。

津波警報

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「津波」警報とはいいますが、実態は「震度計から地震の規模を計算し」「その結果から動いた断層を想像し」その結果津波の大きさを計算するといったものです。津波を測ってるのではないのです。だから今回のように正確な津波の高さの予測には限界があります。そこで海に浮きをうかべてその高さをGPSで計測して気象庁に送ってくるシステムがすでに動いていて今回もこのデータからマグニチュードが当初の8.4から時々刻々アップしていきました。

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この「浮き」は全国数か所にありますが、点としての情報しか得られません。

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海岸にレーダー基地を作り、海面の動きを面で捉えることができれば津波の予報は格段に進歩するでしょう。このシステムの研究費を昨年12月に要望しましたが(みごとに)落選しました。要望するのが311以後なら通ったでしょうに・・・

最後に、先日大阪のハザードマップが紹介されましたがまだ詳細は決まっていません。それは国の基本方針が決まってないことに大きな原因があります。
(おーぼら)

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