「みどりゆたか」になった千里ニュータウン。
私たちは「みどり」といえば先ずは樹木を思い浮かべます。しかし実は千里ニュータウンは吹田市内でもきわめて貴重な草原の宝庫なのです。千里ニュータウン以外の吹田市内ではこれほど多くの草原は見られません。
「温帯に属する日本の 気候は、手を加えず放置していると樹木が育ち、草原はできない。日本で草原として成立しているのは定期的に人間が手を加えている場所がほとんどで、自然のままの草原は海岸の砂丘や干潟、河川・池沼の河畔のように繰り返す氾濫にさらされる場所および湿地や湿原、高地・高山などだ」とは市立博物館の夏季展「子どもと環境」で兵庫県立淡路景観園芸学校の澤田佳宏さんの講演会での話しです。
居住区域と車道とを分けるという思想で作られたニュータウンには両者の境目としての斜面が多数あり、しかも定期的に草刈りがされているので、意図することなく半世紀にわたって草原の環境が維持されてきたのです。
澤田さんは「いま、日本中で草原の植物が消えつつある。保全をしなければ、氷河期後からの植物が消えていく」と危惧されています。その植物とは北千里などで見られるウツボグサ・ワレモコウ・ツリガネニンジン・チガヤなどなどです。
それら草原の植物は周囲に背の高い草や木があると光りが届かないので生きていけないのです。1年に1~2回ほどの定期的な草刈りを求めている植物なのです。そして草原にはバッタ類、チョウ類など昆虫類も多く生息していて樹林と違った生きものの生息環境となっています。
環境省のレッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に記載されているイヌセンブリが10月中旬に千里ニュータウンで花を咲かせていました。このように千里ニュータウンには大木とともに、草刈りをすることで維持されている草原という多様な自然環境があることをみなさんも覚えておいてください。
(おーぼら)
コメント
草原で思い出しましたが、高い木が育つとキジがいなくなるそうです。万博公園からキジが姿を消したのは1998年です。キジが草原の鳥であることを知ったのは「すいはく博物館だより」(45号)でした。キジを戻すことはできないのでしょうか。オオカミを害獣駆除のために導入すべしという運動はありますが、キジを絶滅危惧種にしないための組織的運動はないようです。千里丘陵にキジを復活させることが草原を守ることにつながるのではないでしょうか。
そういうキジを新聞に投稿してみるといいのではないでしょうか。