「共創の場」としての共同館(吉田憲司さん・5月31日講演)

大阪・関西万博が始まり、ここすいはくでも特別展「戦後日本の博覧会」が大詰めを迎えた5月31日、国立民族学博物館(みんぱく)名誉教授(3月末まで館長)の吉田憲司さんをお招きし、今回の万博の「共同館」についてお話しいただきました。吉田さんは今回の万博の「シニアアドバイザー」でもあり、構想~実施にいたるまで支えてこられました。千里のみんぱくと今回の万博は、そのようなところでもつながっています。

(お話の概要)——————
大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。大阪府市が招致のため最初に作ったテーマ案は「人類の健康・長寿への挑戦」だったが、たとえば私(吉田氏)が40年通っているアフリカのザンビアには「健康」とか「長寿」という単語がない。つまり「健康・長寿」という概念は万国共通とはいえず、その言葉をテーマに掲げることは、価値観の分断をあぶりだしてしまうおそれがあった。そこで博覧会国際事務局(BIE)総会への申請時点ではより包摂性の高いテーマとなるよう「いのち輝く未来社会のデザイン」としたのだった。(ザンビアの現地語で「こんにちは」に相当する表現は「いのちがありますか?」と言う。「いのち」は多くの言語で理解される概念である。)

70年万博のプロデューサーは岡本太郎一人だったが、今回は8人のプロデューサーが担当した。8人がそれぞれテーマを解釈した展示がシグネーチャーゾーン(会場の中心部)にある8つのパビリオンで見られる。

テーマの下には3つのサブテーマがある。
1)いのちを救う(Saving Lives)
2)いのちに力を与える(Empowering Lives)
3)いのちをつなぐ(Connecting Lives)
すべてのパビリオンはこのテーマに沿って展示を行う方針。

開発途上国の多くは自前のパビリオンではなく主催国が建てた共同館(コモンズA~D)にブースをもらって展示を行う。その中に入る国は今までの万博ではアフリカ館とかオセアニア館といったように地域別の国々に分けられていたが、その結果、内容は観光案内、物産・土産物展、商談の場となっていた。

今回は世界がコロナ禍を体験した直後の開催で「いのち」がテーマなので、共同館(コモンズ)もサブテーマ別にA~Dの館に入るようにした。
コモンズAはサブテーマ「いのちに力を与える(Empowering Lives)」
コモンズBはサブテーマ「いのちをつなぐ(Connecting Lives)」
コモンズC・Dはサブテーマ「いのちを救う(Saving Lives)」

このうちコモンズCはJICAの支援対象国でない国が入る。

2023年秋にJICAの途上国出展支援プログラムとして30カ国の担当者と8日間のワークショップ(みんぱく見学、広島の原爆資料館見学など)を行い、テーマに沿った魅力的な展示の仕方を学んでもらった。その対象国は、共同館+単独館のうち規格型のパビリオン(タイプB)を建てる国々も入っている。

実現した共同館の展示類型は、
1)「コンセプト実現型」のパビリオン
2)「一点集中型」のパビリオン
3)「物産展・観光案内型のパビリオン
に分類され、さまざまであるが、このように主催国と参加国が「共創する」工夫によって、今回の万博は実現している。
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万博を観覧されるみなさんも、このような目でコモンズを楽しむ方法がありますね。

(人間AIおーぼら、おっくん)

館外ではボランティアさんが「吹田くわい」のお世話に余念がありませんでした。

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