志賀浩二著『数学が歩いてきた道』 PHPサイエンスワールド新書 840円
「数学はあきまへん」という人はけっこう多く、私もその一人なのだが、なんの魔がさしたのかこの本を買った。ゼロの概念、円周率π、ピタゴラスの定理、微分・積分、素数、虚数、対数、複素数などとでてくると、過去の悪夢がよみがえってアタマが痛くなった。
現代数学はギリシャに端を発し、主としてヨーロッパで発達したもの。日常生活とはほとんど関係がない。むしろ数学はオタク的哲学と考えたほうがいいほどで、私も途中からそう言う読み方になった。
しかし問題はこの数学が日本の教育の中にしっかり組み入れられていることだ。加減乗除まではいいのだが、分数、小数点でつまずき、三角関数あたりから別世界のことになってしまう。それをきっかけに数学がダメとなり、さらには勉強嫌いになって「受験ライン」からオチこぼれてしまうのだ。
ふるさとで、友人の大工の棟梁と酒を飲んでたら「ワシは中学までよく勉強ができたのだが、√のところで数学がさっぱりわからなくなり、大学に行くのをあきらめて親の跡を継いだ」という自慢とも、後悔ともつかぬクダをまかれ、「いまはオマエのほうがずっとまる金やんか」と言い返したことをおもいだす。
かつて、わたしはスゴウデの家庭教師といわれていたことがある。思い返すと、はじめに自分自身の躓きがあり、それをやっとこ乗り越えてきた経験をふまえることで、子どもに分からせる説明がうまかったのだと思う。
(カンチョー)
コメント