館長ノート 16

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千里にゾウがいた頃

「小さかった頃、ニュータウンで骨が見つかったという噂がひろがり、殺人事件か行き倒れかなどと考えて、とても怖かったおぼえがあります。事件はなかったようだし、あれは何だったのか、考古学から説明できるでしょうか」、こんな質問が博物館に寄せられました。文化財保護係の増田真木さんに答えてもらいました。
それはヒトではなく、ゾウのものでしょう、年代は120万年以上前。考古学からみるとニュータウンの区画のなかには、古墳などの遺跡は今のところ見つかっていないので、ヒトの可能性は少ないと思います。

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千里丘陵は、約300万年前から50万年前(鮮新世末~更新世中期)にかけて堆積した砂礫や粘土層(まとめて、大坂層群と呼んでいます)が、その後の地殻変動によって隆起して出現したものです。この長い時間のあいだに、気候は暖かくなったり寒くなったりしたので、海水面が何度も上下しています。そのため、丘陵の断面図をみると、海底で堆積した地層と、川の河口で堆積した地層が300m近くの厚さとなって重なり合っています。また、地層の間には何層もの火山灰層が挟まれており、火山活動が活発な時期があったことを物語っています。
吹田市内では今から250万年前~120万年前にかけて生息していたと考えられるアケボノゾウの歯や牙の化石が片山町や佐竹台で見つかっています。また、豊中市待兼山ではおよそ40万年前と考えられる地層から体長8mにおよぶマチカネヤマワニの化石が見つかっています。ヒトが日本列島に現れるはるか前の吹田市には、ゾウやワニがいる風景があったのですね。

写真のキャプション
○アケボノゾウ
吹田市立博物館の常設展示場にあるアケボノゾウ化石(左牙と切歯骨の一部)
200万年~60万年前に生息していた肩高2mほどの小型のゾウで、日本特産。
○100万年前
富田林市石川化石発掘調査団『富田林の足跡化石』1994より
「扇状地の林と動物」
扇状地にはメタセコイアやハンノキが林をつくっている。
動物は前からシカマシフゾウ(大型のシカ)、アケボノゾウ、カズサジカ(小型のシカ)

コメント

  1. fk(投稿者) より:

    それでは、千里に人が姿を現したのはいつごろですか。そのときの風景はどんなだったんでしょう。

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