館長ノート:ギャル文字

画像ギャル語とかギャル文字と聞いてケーチョーフハクと眉をしかめる人もいそうだが、ギャル文字というのは変体仮名の一種だと思う。

メールでかいま見たおばさんたち(ギャルに必死について行こうとしている)の会話。
「(≠ゃ→£っ⊇゛→L丶」「これ、きゃーすっごーいと読むの?」「ピンポーン」「わたし、もうついてけなーい、変換器つかわなければ」「えーそんなもんあるのー」「ウエブに」。
変換プログラムがあることはギャル文字が確かな体系をもっていることに他ならない。これはケータイのさらなる売り上げを図る電話会社の回し者の仕業だろう、もっとも、体系と言っても、かなの部分をむりにわけたり、似たものに入れ替えただけの単純なもので、機械打ちシステムのなかでの新しい表現法なのである。

文字にも遊びが必要なことは、前回に述べた(2006/10/04のBlog「変体仮名看板探訪記」)。遊びは古代文字の解読だけでなく、モールス信号(日本では「いろは」をツーとトンの2音の組み合わせにおきかえていた)、暗号(さまざまの仕掛けがあるものの、マニュアルがあれば簡単にもとの文にかえすことができる)などにも通じるものがある。

同じケータイでも絵文字は記号である。一つ一つが、特定の音に対応しないこと、意味が曖昧で、たくさんの解釈ができるといった性質を持っている点で、文字とは異なる、あるいはまだ文字ではないのだ。

オーストラリア中央砂漠で描かれるアボリジニの絵には、記号としての文様がちりばめられている。たとえば、同心円文は泉、おっぱい、キャンプ地など、波状文ならヘビ、川、道などといった取り決めがあり、画家はそれらをたどりながら、よどみなく神話や説話を語る。しかし、記号に対応する言葉(音)は語族ごとに異なっているのである。

文字の歴史をみると、古い文字ははじめは記号にちかい複雑な象形文字だったが、次第に言葉に対応した音をあらわす簡素な表音文字に移るという大きな流れがみえる、情報をはやく正確に伝えるという目的に沿って変えられていったのである。

現代は情報の時代、今や携帯電話は欠かすことのできないものになりつつある。しかしそんななかで、記号(絵文字)や変体仮名(ギャル文字)などの遊びが滅びることなく残ることに、情報とは何かということについて、本質を根本から考え直してみる必要がありそうだ。

(カンチョー)

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