「酒のなる木」と竹

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40年前、地質調査のためにマレーシアを訪れた時のこと。
わたしたちが宿舎としていた場所のすぐそばに、1本のヤシの木があった。
毎日、夕刻になると、竹のハシゴをかけ、ヤシの木の上でゴソゴソしている男がいた。

約一週間後・・・
この木の下で、近所に住む4人の男が、塩漬けの魚をフライパンで焼いたものを肴に、酒盛りをしていた。手招きされたので、わたしはこれ幸いと、仲間に入れてもらった。

彼らが飲んでいたのは、この木でとれた「ヤシ酒」だった。
実のなる枝(柄)を切断し、切り口から流れ出る樹液を竹筒で受けると、樹液は自然発酵し、約1週間ほどで酒ができあがる。男は毎日、樹上で仕込みをしていたのだ。
ヤシ酒は、ドブロクによく似た感触だった。日本の酒は税金のために高くつくが、この酒は無税、(そのせいでもなかろうが)ことのほか美味しかった。

写真は、竹のハシゴがかけられ竹筒が取り付けられたヤシの木。
1968年、マレーシア・Ranauにて。

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ハシゴや筒ばかりでなく、家屋の床や壁にはタケがたくさんつかわれていた。この竹材は、一見するとモウソウチクとよく似ているのだが、竹藪のようすは全く異なっていて、株のようになって生えていた。若いタケノコが見えたので、試食しようとしたが、ゆでてもゆでても硬くて歯がたたず、とても食べられたものではなかった。
地質屋として調査にいったので、タケを同定する気も知識もはなく、種は残念ながらわからない。とにかくすごい勢いのいい熱帯性タケだった。

(A元)

コメント

  1. みっちゃん より:

    A元さん、スクラップ帳に写真ネガを丁寧に整理されていました。ネガを白黒でもベタ焼きされていましたが、古い物で色が出るのか心配しましたが、綺麗に焼きつけ出来ましたね。

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