食用に不適と判断されたコメを細工して食用に廻し多額の利益をむさぼる(一部)食品業界の悪辣さたるやひどいものだ。中国製ギョウザや有名料理店の2度だし、賞味期限改ざん、などつぎつぎ業界の暗部が暴かれてゆく。ゆるせん、万死に値する、と怒るのは簡単だが、いろいろ考えさせられることもある。
19世紀のヨーロッパでは、砂糖に砂、牛乳には水、パンには焼石膏、ビールには硫酸第一鉄を混ぜる不正が産業化した食品・飲料製造業者や流通業者によって引き起こされていたそうだ。近代化のひずみというべきモノだ。今は規制が厳しくなりそうでないとおもうが、日本がこのていたらくなのはまだ近代化が消化できてないということだろう。
もともと人間は食べられないものをどう食料にするかについて努力を重ねてきた。とくに植物は難儀な食べ物で、縄文時代ならトチ、ドングリ、ソテツの実、マンジュシャゲなどは毒やアクを抜かないと食べられない。それにフグまで食っているではないか。そもそも、酒なんて果実や食べ残しのオカユがくさったものだが、たまたま毒でなかったのでうまく取り出す技術を磨いてつくりだしたモノだ。人類は飢え死にするか毒をたべても生き延びるかについてずっと綱渡りをしてきたと思う。それは、第二次大戦後の食糧危機の時日本人が如実に体験したことで、野坂昭如の「火垂るの墓」をはじめとする自伝的小説に描かれているとおりである。
という点で理解に苦しむのがメタミドホス米を使った焼酎である。問題は原料ではなく、製品が毒か、安全かなのである。会社は安い原料を使って知らん顔をしてたというのが許せないのであって、正しく説明し、安全であることを証明し、みあった値段をつければいいではないか。もっとも、老人や幼児の給食をねらった所などは、何でも安ければよいという行政のズサンさ、弱者に対する思いやりのなさと、その間を跳梁するカネだけしか考えないヤツらの存在のおそろしさを改めて感じる。しかし、これは食料調達という「現実」と悪は許せないという「感情」の2つが混在しているのである。わたしたち、現代の都市生活者はそんなことを気にしてては何にも食えなくなり、国中が饑餓におそわれるという危険さえ感じる。しんどいけど、冷静に論理的に考えねばならねばならない問題である。
(カンチョー)
コメント
かと言って、メラミン入りの粉ミルクはいくら安価でも、尻ごみします。また「COOP手作り餃子」や「中華deごちそう ひとくち餃子」など、メタミドホスやジクロルボスたっぷりの餃子も・・・
おっしゃるとおりです。メタミドホス入り焼酎も和菓子も、これから出てくるであろう二次加工飲食物について、「体に害がなければ安価で提供されていい」という論理は成り立ちます。でも少し疑問。すべての食品の原料や飲料水、ひいては生命の水・ビールにまで及びかねません。戦後のひもじい時代がウソのように急成長した結果、モノがあふれ豊かになりすぎた一日本人のボケもあるやもしれません。論理と倫理に経済を加え、ウルグァイラウンドのなんとも不可思議な約束事という政治の問題も論理的に考えなくてはならないのではないでしょうか。しかし、何の気兼ねもなく純な焼酎を飲みたいものだと・・・ジタバタするわけです。