「吹田市の自然物語」09年8月8日(土)講演「野生動物の反乱」

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■「けものと魚からみた環境―動物考古学の視点からー」内山純蔵(総合地球環境学研究所准教授)
 内山純蔵氏は、鳥浜貝塚と粟津貝塚から出土したけもの(イノシシ)のホネから人と動物の関わりについて語った。
 人里近くに出没するイノシシはニホンシカと並び陸上動物の代表で、草食、雑食性、繁殖力旺盛。人にとって食料となり、生態系でのライバル関係にあった。イノシシをどう扱うは大きな環境問題である。人はイノシシを神の使い、豊穣、狩猟、戦場での勇気の象徴と見なしていた。
 鳥浜貝塚に比べ粟津貝塚からイノシシのホネが多く出土し、ドングリ類の利用が盛んであった
ことから年齢構成、オスとメスの比率、食性について考古学的に現れる特徴を説明した。歯がすり減っている状態から粟津貝塚では餌にドングリ類を与え、飼っていた。粟津貝塚は無貝塚縄文時代にあり、鳥浜貝塚は貝塚縄文時代であった。
貝塚の消滅は縄文人と自然の関係が変わったことを示している。

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魚、シカ、イノシシ、植物、山々、太陽、月は神の贈り物であり、魚、シカ、イノシシ、植物などを食べてあの世に送り返す儀礼の場が貝塚であった。ここでは人間が支配できる範囲は小さく、自然の神々のものであった。イノシシを飼い、畑を耕作するようになり、貝塚消滅後の世界は人間が支配する範囲が確立し、広がり、自分の土地の管理、イノシシを家畜化したことを示しているとその違いから人の自然観の変遷を語った。

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■琵琶湖の魚と人  中島経夫(滋賀県立琵琶湖博物館上席総括学芸員)
◆琵琶湖の魚と人の関わりを考古学的に、
  市民が楽しく魚にふれあう魚調査を語る
 中島経夫氏は、琵琶湖の「魚と人の関わり」「水田と魚の関係」を語り、市民が楽しく魚にふれ、流域の環境を守る琵琶湖、淀川流域での魚調査について講演した。
時代区分を(1) 旧石器時代~縄文時代草創期
(2) 縄文時代早期~後期 (3) 弥生時代に分け、水辺での漁労、大型獣を対象とした狩猟経済、水田稲作、養鯉などの変化を詳しく説明した。
 長江流域における漁労と稲作、中国の魚との
比較など考古学的な資料を交え、水田と魚の関係を述べた。フナを元に行われた養鯉から魚は水田で育つがよく、魚は人のつくった環境を利用し、人はその魚をタンパク源としていた。野生の魚の「家畜化」である。魚はオカズとなり、食文化となり、遊びの対象になり、魚への関心が高まった。
 今日の魚と人の関係を守山市での調査から、外来種は市街地にみられると調査結果を落とし込んだ地図で説明した。
 1998年から2008年にかけて琵琶湖、淀川流域
17,866地点で行った魚調査を述べた。この調査は
市民が魚にふれ、魚とりを楽しみ、流域の環境を
守ることを目的としている。琵琶湖博物館うおの会は調査目的ガイドブック『魚 さかなとりのたのしみかた』初級編、上級編を作成した(中島氏は編集責任者)。また琵琶湖博物館うおの会調査
票の調査カード(初級編、上級編)へ記入する協力を得ていると事例を紹介した。

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◆「うおの会」、ニブロブナ、ウナギの放流
 歯の磨り減り方の見方
 館長トークと参加者との交流を行った。
 「うおの会」の組織は、魚のとり方、分類などのスキルアップを目的に月1回定例会を開き、テストに合格して上級へ進む組織化を行っていると中島氏は述べた。参加する人は楽しみ、調査カードは戻ってくると答えた。
 守山市の外来種は琵琶湖から入ってくる。流れがあるところは苦手。扇状地で伏流水があるJR線で分かれている。琵琶湖以外では在来種が健闘しているが、琵琶湖のブルーギルなどを排除するには時間を要することもあり、本来の自然(健康)を取り戻すまでには至っていないと語った。
 ふな寿司のニブロブナを田に入れ、成育させ琵琶湖に放流しており、水田と水路の落差があり漁道をつくっていると取り組みを紹介した。さらに淀川流域をのぼってきていたウナギが天瀬ダムによって遮られているが、幼魚を放流していると
海とのつながりを語った。

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 イノシシ、魚の歯から食性と進化系統について両氏から説明が加えられた。イノシシは囲い込まれるとストレスで歯ぎしりして磨り減らしている内山氏は述べた。さらにシカは山奥で棲息し、冬はクマザサのある中腹に、田植え時に里山に降りてくること、ヘビは三輪山、クマは神武天皇に、イノシシはヤマトタケルにと日本の神話、『古事記』に組み込まれていると紹介した。

(報告作成・M)

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