講演会『市民とともに育つ博物館  -全員参加型の博物館をめざして- 』

画像9月26日(日)午後2時から国立民族学博物館研究員の五月女賢司氏の講演会『市民とともに育つ博物館  -全員参加型の博物館をめざして- 』がありました。

はじめに、博物館における学びについて分析と将来像のお話がありました。「博物館における学び」とは自分の知識を再構築する場であり、複数の人が協力してひとつのものを作れば互いの持ち味が加わって1+1で2以上が導き出されるでしょう・・・
つまり、正しい知識を学ぶことのみならず学ぶ過程が大切で自分の経験を通して新たな知識の自分化ができるのではないかと言われてます。(大学の講義みたいでわかりにくかった)

【博物館における3つの世代】
1960年代までの博物館は国宝や天然記念物などの宝ものの保存を運営の中心とした。60年末以後は保存中心だけでなく多様な資料の公開が主流となった。90年代に入ってから博物館が公開するだけではなく、市民の主体性を大切にした博物館が大切だと言われてきている。(伊藤 寿朗『ひらけ、博物館 (岩波ブックレット)』 (単行本 – 1991/3)

【カリブ海に浮かぶ島国の博物館】
5年前、五月女先生はカリブ海の小国の博物館に勤務していました。その時の話。
カリブ海のセントクリストファー・ネーヴィスという国は面積は262平方キロで淡路島(592平方キロ)の半分弱、人口は(甲子園球場が満員にならない)4万人という国。最近、サトウキビ産業がすたれ、観光業にシフトしている島国です。

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この島には先住民としてカリナゴ族 (最近はカリブの人々はカリブ族という言葉が別の意味も含んでいるようなのでカリナゴ族と自称する)がいたが、1623年に英国人のトーマス・ワーナーが、2年後にはフランス人も来て大量の先住民を虐殺して、残りは島の外に追い出しました。この島の先住民の文化は途絶えたのです。

画像一方17~18世紀は奴隷貿易の時代でした。1000万人が奴隷としてアメリカ大陸に運ばれました。途中のこの島にも奴隷が連れてこられていました。いまこの奴隷の子孫が博物館でルーツを探る活動を始めているのです
「自分たちの文化を築きたい」「奴隷の末えいとしての文化を(白人・先進国に)曲解されている。白人に映画などで人食い人種のようにイメージされてることは耐えられない。」とアフリカに太鼓を学びに行って帰国して子どもに教えるなど今、アフリカから文化を取り入れたり、まちの壁に黒人のヒーローの似顔絵を描いたり、自分たちの文化を知ってもらう活動をしています。
1989年にできたNGOが2001年から博物館を国から運営委託されています。展示物は大したものはないのですが彼らの思いは強く、学芸員たちは熱いのです。過去を振り返る特別展ですが展示品は現在のアフリカの品や現在の住民のアートなのです。展示物は何であれ、自分たちのほこりを取りもどす博物館になっています。
さらに、(ここが英仏に奪われる以前の)本来の先住民の文化も展示されていて、(たぶん今は他国にいる)先住民の子孫が見に来てました。

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【大学生が考える博物館展示】
いますいはくでは平成22年度実験展示「大学生が考える博物館展示」がおこなわれてます。ここでの実習を終えたらまもなく学芸員の資格を得られるだろう20人の学生がすいはくで展示の実習をしたのです。
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5日間でしたが充実した実習でした。展示や解説文を作りそれを見やすく展示するなどの実習で多くの学びがあったことと思われるます。ホクサンバスオールは汚れきっていたので学生が洗濯したのです。知力のみならず体力もためされました。近現代の生活を体験できるコーナーも設けました。
しかしいざ展示を観客に説明すると近現代の品々(電化製品)では学生が教えられる場面が続出しました。昨今の博物館では「展示解説員」とか「解説」という(上から目線の)名称ではなく「交流員」とか「コミュニケーター」と呼ぶようになり双方向の考え方になってきています。
ふつうは「展示が完成したらおしまい」と思ってしまいますが、「会期が始まってから、展示の解説やワークショップ、講演会などが重要なのだ」ということが学生にもわかったのではないかと思います。

【博物館への市民参加参画の意義】
博物館への市民参加参画の意義はいろいろあろう。
1)博物館を展示を見る、ホームページやデータベースを見る、ボランティアとして参加参画するなど、さまざまな形で利用することで既存の知識を習得するだけでなく、新たな文化を発見創造する。市民の参画は博物館の活性化や情報発信に貢献する。
画像2)民博の学者は博物館だから就職したという人は少ない。学者として自由に研究でき、フィールドワークができるので就職する学者が多い。しかし民博は研究所という機能のほかに博物館なのだ。公共にオープンされている博物館は利用者がいるからこそその存在意義がある。市民参加参画により来館者やボランティアからの意見をもらい博物館側も学び成長していくことができる。
3)市民参加参画により双方のリテラシー(利用の仕方、どのように利用されるべきかの考え)が向上していくであろう。

150年前リンカーンは人民の人民による人民のための政治と言い、50年前ケネディは国が何をしてくれるではなく、国に対して何ができるのかを問えと言った。(そろそろ)市民側も(行政に求めるだけでなく)自ら何ができるかを考えることもアリではないだろうか。
(おーぼら)

コメント

  1. こぼら より:

    おーぼらさまの詳細報告に感謝。行けなくてどうしようか…と思っていたのでとてもうれしい、ありがとうございます。
    わたしにとっても、すいはくは、自分にとっての「ふるさと」を考えるきっかけになっていると思います。

  2. おーぼら より:

    こぼらさんへ。。。こんなことしかできないのですが、こんなことで喜んでいただけましたらボラみょうりにつきます。感謝。

  3. 五月女 賢司 より:

    早速詳細なご報告をありがとうございました。このブログに報告されることを事前にまったく知らされていなかったので、びっくりしました。

    読んでみると、私が実際に話した内容と比べて、若干のニュアンスの違いや、事実誤認、なぜカリブ海と学芸員実習の事例をお話したかの説明が欠けているなど、いくつか気になる点がありました。どのようにしたらいいでしょうか。お教えくださいませ。

    あと、お伝えしたいことが十分に伝わらなかった時のために、吹博の学芸員さんに十分な質疑応答の時間を取っていただいたので、分かりにくいことがあれば、ご質問やご指摘をしてくださって良かったのですよ。

    いずれにしましても、ご参加くださった皆様のお陰で私にとってはとても楽しい会となりました。ありがとうございまっした。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

  4. 五月女 賢司 より:

    一つ前の私のコメントの最後の方が「ありがとうございまっした。」になってしまいましたね~。失礼しまっした!お~っと(笑)

  5. おーぼら より:

    「ニュアンスの違い、事実誤認、なぜカリブ海の説明が欠けている」どのようにしたらいいでしょうか。

    当日の夜、リョーマデンを見ながら写真を作ったり文章ひねくったりしてましたもので・・ま、事実誤認、説明不足は追記追記で修正していくしかないのかな?と思ってます。
    そこで、修正、追記文章±写真がありましたら、カンチョーあるいはこぼらさんに送ってください。→修正文は直ちにアップされることでしょう。
    よろしくお願いしまっす。

  6. こぼら より:


    おーぼらさん、了解しました。
    ということで、五月女先生、おまちしていまっす!

  7. 老婆心okkun より:

    「こぼら」さんって誰だか、五月女先生わかってらっしゃる?

  8. こぼら より:


    はい、研究室におしかけ、カミングアウト?してきました。今、しっちゃかめっちゃかの状態のようで、「ちょっと待ってね」ということでした。

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