2010年 かぎろひ+月食

「かぎろひ」とは、厳冬期の夜明け前に現れる太陽光のスペクトル現象で、真っ暗の空が藍色、青色、オレンジ色などに変化する現象です。

持統六年(692年)旧暦十一月十七日の早朝、柿本人麻呂が
「東(ひむがし)の野に かぎろひの立つみえて かえり見すれば 月かたぶきぬ」
と詠みました。(万葉集巻1-48)

毎年旧暦十一月十七日の早朝午前4時から、
人麻呂が読んだ場所(阿騎野)とされる奈良県宇陀市大宇陀町のかぎろいの丘万葉公園で「かぎろいを見る会」が催されます。

今年はその旧暦十一月十七日が元日と一致しました。しかも
「かえり見すれば 月かたぶきぬ」ばかりではなく
「かえり見すれば 月欠けとるがな」なのです。

そうです、2010年初日の出の前に部分月食があります。
大阪の月の入りは7時18分、日出は7時05分です。

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共同通信の記事には「国立天文台によると、
元日に日本で月食が見られるのは史上初」とあります。
月食は満月の時にしか起きません。
太陰暦である旧暦は月の動きと暦とが一致してたので元日は月齢ゼロで必ず新月でした。
だから元日に月食が起きることはあり得なかったのです。
つまり「元日に日本で月食が見られるのは史上初」とは、
それ以前の太陰暦では起こり得なかったのだから
「明治5年の太陽暦になってからはじめて」ということでしょう。
(日本の戦国時代の1582年に始まった現在の「グレゴリオ暦で初」なのかは確認していません。)

柿本人麻呂が詠んだのは旧暦の17日でほぼ満月の時でした。
与謝蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」は春の夕方ですが柿本人麻呂のものは冬の朝のもの。

ところで
二週間後1月15日にはアフリカ、インド洋、中国、東南アジアで金環食がありますが、日本では部分日食のまま日没します。夕日を追いかけて西に走り、中国、インドまで行くと金環食に追いつくのですが・・・走る?

金環食とは太陽の方が月より大きくて月の外側に太陽がはみ出して太陽が細い輪のように見える現象です。
これは「月の大きさが小さくなったとか、太陽の大きさが大きくなった」というのではなくて、太陽が遠くにいる、あるいは月が地球に近いというために起きるのです。
太陽をまわる地球の軌道は楕円形で、地球と太陽との距離は7月(1億5209万km)に遠ざかり1月(1億4709万km)に近づきます。さらに昨年7月は楕円軌道を回る月もそのころ地球に最も近づいていた(35.7万km)ので~月が大きく見え、太陽が小さく見えたので~小笠原付近では6分間もの皆既日食になりました。

この1月15日といえば、そうです。すいはくに500人以上が集まった昨年の日食イベントからほぼ半年後にあたります。地球を回る月の軌道面と、地球が太陽を回る軌道面が一致しないと月食や日食は起こりません。月の軌道面が半年たったので一致するようになったのです。

今回は(1月なので)太陽は地球の近く(1億4709万km)にあり
(月までの距離は偶然昨年7月とほぼ同じ距離ですが)
月よりも太陽の方が大きく見えるため月が太陽を隠しきれずに金環食になるのです。

月が欠け、太陽がまーるく欠けて始まる2010年。
すいはくは・・・・  

 (おーぼら 写真は読売新聞から)

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