鹿児島とアジアを繋ぐ竹の文化

画像鹿児島とアジアを繋ぐ竹の文化
-方形首括れ広口魚籠との出会い-

川野和昭(鹿児島県黎明館)

「鹿児島のものだ」と思って近づくと、中国南西部から東南アジアのモノである。強烈な印象を受けたのは、一九九六(平成六)年、の夏、翌年二月に開催が迫った鹿児島県歴史資料センター黎明館の企画特別展「鹿児島竹の世界」の資料調査に入った、民博の第二、三収蔵庫のことである。

衝撃を受けた象徴的なモノが、鹿児島で「カタギイテゴ」と呼ぶ、方形首括れ広口のかたちをした竹製魚籠である。底部は四つ目編みで方形に編み、胴部をゴザ編みで方形に編み上げ、肩部は胴部を編み上げてきた経ヘギのうち両端の数本を横に倒して菱四つ目に編み、首の付け根に向けて括れるように絞って編み上げる。さらに、首の部分は残った経ヘギで再びゴザ編みでラッパ状の広口に編み上げていく。口部は巻縁仕上げにし、舌(蓋)はゴザ目で円錐形に編んで口部に差し込んである。名称の「カタギイテゴ」も、肩部で編み方が一旦途切れるところに由来する。用途は、川、海を問わず投網漁や筌漁などで腰に着けて、捕った魚を入れる魚籠として用いられる。

この魚籠は、鹿児島では大隅、薩摩、奄美大島、喜界島、徳之島にしか分布せず、それ以南の沖永良部島から沖縄諸島の八重山地域までは全く分布しない。鹿児島以北を見ても、九州山地に染み出すようにようにしか見られない。しかし、この魚籠の分布は、台湾、中国雲南省、広西壮族自治区、フィリピン、インドネシア、ラオス、タイ、ネパールに及ぶ。これは「鹿児島」という地域の文化が、「日本」を越境して、東・南中国海を取り囲むアジアに繋がっていることを如実に物語るものである。

この衝撃を起爆剤に、筆者はラオスを中心に「竹の旅」へと爆発する。関心は、「竹の焼畑」を生業とする「竹の生活文化」の比較へと際限もなく広がる。「日本列島のローカルである竹の鹿児島は、しかしアジアのグローバルである」と呪文を唱えつつ、比較の旅と展示を繰り返している。
(図録『平成20年度夏季展示 千里の竹』p.7, 吹田市立博物館 2008 より転載)

文中に出てくるビクは、展示場で見てくださいね!

コメント

  1. おーぼら より:

    このブログの右欄にある【リンク】コーナーにこの夏の博物館でのイベントにリンクを設けました。写真も掲載されていますが、7月6日(日)の講師のお名前は清岡久幸(きよおか・くみ)さんと読みます。

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