ビールにみるグローバル化

画像ビールは今、ワインとならんで世界でもっとも人気のある酒です。 2007年の統計(*1)によるとその生産量は1.8億キロリットル。第一位は中国、ついでアメリカ、ロシア、ドイツ、ブラジル、メキシコ、日本、イギリスの順。

しかし、チョット変だと思いませんか?ミュンヘン、サッポロ、ミルウォキーというコマーシャルがありましたが、日本人にとって馴染み深いビールといえばヨーロッパやアメリカのもの。ややふるい統計(1991)をみると、国民1人1年あたりのビール消費量はドイツ142.7リットルで断然1位、以下デンマークやアイルランドがつづいています。これならまあ、わかります。

そこで、対前年比生産量をみると、中国、タイ、ベトナムなどアジア諸国と、ロシア、ウクライナ(このブログの長江さんのレポート参照)の伸びの大きさが目につきます。中国は2002年にアメリカを抜いて以来6年連続、しかも3年連続2桁台の増加でした。また、中国だけでなく、タイ、ベトナム、韓国など、アジア諸国の伸びも著しく、今や世界のビール生産の中心地と言えるほどです。

この現象は、その社会の近代化とふかく結びついていると思います。巨大な設備(と投資)が必要だが、それによって大量に、安く生産できるというビール産業の特徴は、工業製品と共通しています。その実績は新大陸のアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドで証明されているのです。

中国は経済発展によって、個人所得が増加し、生活水準の向上ぶりがめざましいことはテレビや観光旅行で実見するとおりです。その目標が日本とアメリカ、同じことは他のアジア諸国にもいえるでしょう。ビジネスマンが背広姿で食事の時に軽く一杯、おしゃれなリゾートでみんなでパーティ、ビールにまつわるそんな光景が彼らのあこがれのイメージなのでしょう。一方、旧ソ連や東欧諸国はもともと飲んべえの国で、ウヲッカなど強い酒を好んでいたはずです。しかし、自由化による経済発展によって、健康志向にめざめ低アルコール飲料に変わりつつあるようです。ビールをとりあげるだけで、グローバル化の波が世界にひたひおたと押し寄せていることがわかります。

*1 ビール酒造組合HPの統計による

(カンチョー)

写真は、引き札(アサヒビール株式会社蔵)

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