五山の送り火がおこなわれる16日、すいはくでは外来種の講演会がひらかれていました。
まず高槻市の芥川緑地資料館[あくあぴあ芥川]主任学芸員・高田みちよさんが「外来種は悪者なのか」というテーマで50分の講演をしました。
外来種とは本来いないはず場所に外から人によって持ち込まれ、繁殖している生物のこと。
帰化種、移入種も内容は同じだがニュアンスが違う。
外来生物の中で、定着している、いないに関わらず、地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性をおびやかすものを侵略的外来生物と呼ぶ。沖縄のマングース、小笠原のグリーンアノール(トカゲ)、ドイツのイタドリなどなど。
外来種の影響
(1)在来種をおびやかす。
オオクチバスは何でも食べる。在来種そのものをも食べる
オオブタクサは繁茂して背の低い在来種に光を与えない。
タイワンザルは在来種のニホンザルとの間に雑種ができてきた。
タイリクバラタナゴはニホンバラタナゴとの雑種ができている。
シナダレスズメガヤは造成した斜面に吹き付けて斜面の土砂崩れを防ぐ目的で使われた。その種子が河川敷にも広がり在来植物の生長を妨げている。
セイヨウオオマルハナバチは北海道でビニールハウスでのトマト栽培で受粉のために使われたが、ハウスから野外に出てしまった。在来のマルハナバチより大きいので競争に勝ってしまう。
(2)人に被害を加える。
アライグマ:便に出てくる回虫は乾燥して風に舞ってヒトの口に入ると胃を突き破り、眼や脳に入ってきて死亡例もある。
カモガヤは本来牧草だったものが最近は河川敷や道ばたに繁茂しだした。花粉症の原因になっている。
蚊:細菌やウィルスを媒介する。
セアカゴケグモ:咬まれると非常に痛い。
カミツキガメ:咬まれると骨折は覚悟しないといけない。
(3)産業被害をもたらす。
マツノザイセンチュウ:松枯れの原因となる線虫。林業の害虫。
アライグマ:農作物が大好き。柿、スイカ、ぶどうなど甘いものが大好き。
ヌートリア:稲を食べる。
カワヒバリガイ:取水口などパイプの中で繁殖してパイプを詰まらせる。さらに体内にいる寄生虫はコイ科の魚に感染すると大量死させたことがある。
平成16年6月から『特定外来生物による生態系に係る被害の防止に関する法律』
略称「外来生物防除法」が施行されているが、環境省の体制は不十分。
外来生物被害予防の三原則は1.入れない 2.捨てない 3.拡げない です。
特定外来生物とは海外起源の生物で、生態系、人命・身体、農林水産業に被害を及ぼすもの、または被害を及ぼすおそれがあるものの中から指定されます。特定外来生物は生きているものに限られ、個体だけでなく、卵、種子、器官なども含まれます。
違反したら個人では懲役3年以下、もしくは300万円以下の罰金。法人の場合1億円以下の罰金に該当する。
日本固有の文化にまで話は及びました。
すでに吹田市内に入り込んでいると思われる特定外来生物は
哺乳類ではアライグマ、ヌートリア。
鳥類ではソウシチョウ、
両生類ではウシガエル、
魚類ではカダヤシ、ブルーギル、オオクチバス。
節足動物ではセアカゴケグモ。
植物ではナルトサワギク、オオカワヂシャ、アレチウリ、オオキンケイギク、アゾラ・クリスタータ、ボタンウキクサ、オオフサモ、ナガエツルノゲイトウなどが考えられれます。
それらについて簡単に説明します。
アライグマは子どもの時は可愛いが、大人になると凶暴になり、決して人にはなつかない。そのため多くが捨てられた。
アライグマ(北米原産):ザリガニや昆虫を食べる。取りやすいので農作物が大好き。柿、スイカ、ぶどうなど甘いものが大好き。
ヌートリア(南米原産):旧日本軍がシベリアの軍服用としたため、養殖された。終戦後捨てられた。水辺のげっ歯類(ネズミの仲間)。競争相手になる水辺の草食獣がいない、天敵であるジャガーのような大型肉食獣が日本にはいないので、増えている。毛皮がいいのでコートに向いている。
ウシガエル(米国の東部・中部、カナダの南東部原産)
食用として輸入され各地の池などで養殖された。昭和7年からアメリカに逆輸出が始まり輸出量はどんどん増え続け、昭和44年には1000トン近くが輸出された。その後猛毒のBHCが検出され米国は輸入禁止とした。日本にはカエルを食べる習慣がなかったので、あまってきたので山に捨てたのが始まりだろう。大きな口で何でも食べるので在来種を駆逐する。オタマジャクシは二年かけて子ガエルに成長する。日本のカエルはtree flogと言われ、水辺で卵を産んでも山の木が必要。ウシガエルは独立した水たまりがあれば生息できる。カミツキガメにウシガエルのオタマジャクシを与えても食べない。よほどまずい味だと思われる。卵やオタマジャクシを食べる天敵がいないために増えているのかもしれない。
カダヤシ:北米のミシシッピー川からメキシコ北部までが原産。メダカの尻尾は矩形だがカダヤシの尻尾は扇型で丸みがある。蚊を絶やす魚として全国の自治体が水路に大量に放流した歴史がある。カダヤシは卵胎生、おなかの中で卵を育てるのに対し、メダカは卵を産みつける水草が必要。したがって単なる水路でもカダヤシは棲むことができる。餌を与えるとカダヤシは素早く餌を採るが、メダカはおっとりしている。カダヤシは低温に弱く0度の冬は越せないが、ここにも温暖化の影響が・・・
ブルーギル:米国東部原産だが米国内でも西部に侵出している。オスが産卵床というくぼみを作りメスが産卵したあとオスが子育てする。1960年、当時皇太子だった天皇が訪米の際もらってきた。‘プリンスフィッシュ’なので当時の水産庁は必死で養殖した。
米国では今でも高級魚として保護されている。白身で美味しいが、皮が臭くて料理が面倒。日本にはアユやアマゴなどの川魚がいるのでブルーギルを食べる習慣はできなかった。10月8日にアクアピアで食の文化祭があり、そこでブルーギルのフライを出展するので来てほしい。小魚や魚卵、昆虫など口に入る動物を大量に食べることが問題。日本のドンコやナマズのような肉食魚はえさを与えすぎると死ぬが、ブルーギルは食べただけ大きくなる。
オオクチバス(ブラックバス)北米原産:1925年神奈川県の芦ノ湖に食用、釣りの対象として導入された。導入当初から食害が懸念されてきたが、対策が追いつかず全国に広がった。GHQが釣りのため全国に広めたといううわさもある。釣りとしての職業が確立してしまっているので特定外来生物に指定するにあたり釣り業者からの反発があった。オオクチバスが絶滅すると生活が困るという人々もいる。滋賀県や福島・秋田県ではキャッチ&リリースが禁止されている。大阪府はリリース禁止の条例はない。白身で美味しい。
セアカゴケグモ:1995年高石市で確認された。コンテナ等に付いて侵入してきた可能性が高い。咬まれるとかなり痛く、数週間続く。側溝や石垣のくぼみに生息する。
交尾のあとオスが食べられる機会が多いのでゴケグモと名づけられた。屋外に置いた服に付いて屋内に持ち込まれる可能性があるので注意。
ナルトサワギク:アフリカ南部原産。鳴門市で確認された。埋立地の緑化に使われた植物の種子に混入してたと考えられる。乾燥地に生える。茨木市の彩都の造成地がナルトサワギクの群生地になっている。アルカロイドを含むため牧場に生え出すと草食動物に害を及ぼすようになろう。
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つづいて大阪自然環境保全協会理事の木村進さんが「大阪のセイヨウタンポポとカンサイタンポポ」と題して過去30年間の大阪のタンポポの様子、さらにたんぽぽをめぐる諸問題を語られました。
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東北地方以北にあるエゾタンポポ、さらに北海道の東北端から北方領土にあるシコタンタンポポは在来種であるが染色体が6倍体、8倍体で昆虫の媒介がなくても種子をつくることができる能力を獲得していることなどの説明がありました。
写真は択捉島蕊取(えとろふとう・しべとろ)で咲いていたシコタンタンポポ。8倍体だけに実にデカイ。
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タンポポの記事も今、思い出して下書き作成中です。いましばしお待ちください。
(おーぼら)
コメント
おーっ、ブログの内容が進化しましたね。
外来種の項はまだまだ進化しそうですね。
た・の・し・み
「大人」と書きながら「子ども」と書くと大人全員が子供全員を差別しているように見えて好ましくありません。「大人」と書く場合は「子供」と書いてほしいです。それでもひらがなを使いたければ「おとな」「こども」でお願いします。こうして書き方をそろえればお互い皆平等に見えて気持ち良いです。