民主党が政権交代を果たし、これまでの政治が一挙に刷新されるはずだったのにカネでつまずき混乱が起こっています。地獄の沙汰もカネ次第でしょうか、大きく考えると3つの点に集約できそうです。1)現代の経済にたいする不安、2)首相がママからもらったオコヅカイ、3)幹事長のもとにどこからか大金が集まり、消えたこと。これらは経済学の問題といえるでしょう。
1)現代の経済にたいする不安
経済学は、英国のアダム・スミスの『国富論』からはじまり、フランスやアメリカなどとの国際的相克を経て、マルクス、ケインズの近代経済学に進化しました。ここまでは、カネについて道徳や正義が論じられ、その内容がわかる気もするのですが、現在はリーマンショックを引き起こしたあの金融工学、つまり確率、平均値、分散などのデータをコンピューターで操る「ゲーム」になってしまって、(専門家でも)何が起こるか予想がつかない、まるでバクチのようです。しかし、それはケシカランとおこって何の対策もしなければ、営々と働いて世界が驚くほどに貯めた日本のカネがむしり取られてしまうと専門家は言っています。したがって、そのプロセスや原因がみえないわたしたち庶民は(マスコミがいろいろ書き立てることもあって)、就職口はあるのか、会社は倒れないのか、年金や貯金は大丈夫か、食料飢饉がおこるのではないか、ついには日本は崩壊するのではないかなど心配が募るばかりです。
以上は私の素人意見ですが、次の2つは民族学による方がわかりやすく説明できます。
経済人類学者ポランニー(1886~1964)は古代社会や未開社会の研究から説き起こし、経済の基礎である「交換」には互酬性(reciprocity)、再配分(redistribution)、市場交換(market exchage)という3つの形態があることを提言しました。学術用語を使うと難しそうですが、人間の社会ではどこにでも見られる行為なのです。
2)首相がママからもらったオコヅカイ
互酬性とは、親子、夫婦、親類、友人などの間で、モノを与えたり、世話をしたりする、「代償を必ずしも要求しない」形です。ママが子供に小遣いをやるのは当然ですが、首相があの額、あの地位、あの歳になってまでネーとだれもが思いますが、優れて日本的なのです。
3)幹事長のもとに大金が集まり、消えたこと
再分配とはオヤブンのもとにモノが一度集中し、それが再び配下に配られるという形で、北西海岸先住民や太平洋の島々などの例が有名です。いわば部族社会レベルの、小規模な集団の特色で、オヤブンを中心にまとめる、自然で効率のよい経済システムといえるでしょう。これも2)と同じく日本のムラや会社ではしっかりと残っています。古くは庄屋さんがそうだったし、戦後の村長、村会議員、国会議員の選挙は飲み放題、食い放題、祭りや行事に寄付集めは当たり前だと、私もはっきり記憶しています。それが大きな問題になったのは田中角栄だったことも。そんな伝統を幹事長がひきつでいるのではないでしょうか。
日本は世界の仲間入りするためには(しかもトップレベルにあるので)、個人を中心とした平等で平和な社会体制をとらざるをえなくなっています。しかし、これは決して日本だけの問題ではなく、たとえばイスラム社会における女性など各地で大きな問題になっています。わたしは、民族学者ですから警告を発するのではなく現実の有り様を観察することに自分を律してきました、人間味豊かな伝統や習慣をすてなければならないのは、残念な気もするからです。しかし、これからは、問題は私たち一人一人にかかってくるのだと思います。
(カンチョー)
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