『石毛直道 自選著作集』
ドメス出版
全11巻+別巻1 (全巻で、76650円)
◎第1部(1~6巻)は、食文化、食研究分野。37800円
◎第2部(7~11巻)は、フィールドワーク、歴史観、環境・住居論、生活学。31500円
◎別巻 7350円—別巻のみの購入は不可
膨大なお仕事
石毛研究室の文献データによると、執筆した項目(単行本、論文、エッセイなど)の数は2850、うち単著25、共編著100くらいだそうだ。石毛さんとはみんぱくでながく同僚だったので、飲み食いを中心にずいぶん一緒に遊んだつもりなのに、いつのまにこれほど働いてたのだろうと化かされたような気がする。そういえば、最近とみにタヌキに似てきたナー。
共同研究の成果
ふつう、著作集といえば、すでに書いた文章を並べるものだと思うのだが、この著作集は原形のままでの掲載は例外的である。その理由の一つは、共編著の数の多さにあると思う。これらは、石毛さんが、たくさん共同研究をやったからであろう。ここに言う共同研究とは、京大人文研から国立民族学博物館につながる方式で、アカデミックにこだわらず人を集め、討論をするという特徴がある。そのため、主唱者は全体を見通し異分野の人たちの意見も学ぶ。しんどい仕事である。
わがまま編集
石毛さんは共同研究の主唱者として、終了すれば短期間のうちに成果をまとめる義務をきっちり果たした。そのため消化不足の感がのこり、改めて考え直してみたい思いをもつようになったのではなかろうか。それが共同研究で書いた論文や短めのイントロダクション、まとめ、解説などを整理して、改めて11冊の本を書いていると私には見える。
飢餓の記憶
人類にとって食は不可欠のものである。それにもかかわらず「男子厨房に入らず」という言葉に代表されるように、軽んじる傾向があった。石毛さんは、それを乗り越え、食を学問のレベルにまで高めた。ゴキブリからガクシャへの昇進である。その原動力は、第二次大戦後の食糧難時代の飢餓感だったと思う。だから、まず食うという行動で解決しようとした。
東海林さだおvs.
石毛さんと肩を並べる仕事に、東海林さだおさんの「丸かじりシリーズ」に代表される膨大な仕事がある。それがきわめてエミック的で、日本に集中しているのに対し、石毛さんはエティツクというか、世界の僻地でこまめに食い散らかしたところに特徴がある。その結果、食と言うきわめて文化的「しばり」のつよいものを、「実は同じものだ」という民族的テーゼに到達したのだといえるだろう。
びんぼう学生をどうするか
それにしても、値段が高すぎる。量も膨大で置き場所に困る。(わたしが古本屋で百科事典をようよう買ったのは何歳の時だったかしら。今はつい手軽にウィキペディアで済ましているが)。しかし、本シリーズのデータとしての質の高さ、広範な地域、民族の実例、切れ味鋭い視点は、将来の食文化研究にとっては必須のものである。大学や研究所、図書館などの公共施設にはぜひ備えてほしい。
(カンチョー)
★石毛直道先生が、NHK「爆問学問」に出演!★
日時:2月2日(木)午後10:55~
「奇食」の話だそうです。見てくださいね
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